雪の進軍

永井建子 作詞作曲


雪の進軍 雪の進軍 氷を踏んで
何處(どこ)が河やら 道さへ知れず
馬は斃(たふ)れる 捨てゝもおけず
此處(こゝ)は何處(いづこ)ぞ 皆敵の國
儘(まゝ)よ大膽(胆) 一服やれば
頼み少なや 煙草が二本

燒かぬ乾物(ひもの)に 半煮え飯に
なまじ生命の ある其の内は
堪へ切れない 寒さの焚火
煙い筈だよ 生木が燻る
澁(渋)い顏して 功名談(ばなし)
粋(すい)と云ふのは 梅干し一つ

着のみ着のまゝ 氣樂な臥所(ふしど)
背嚢枕に 外套(がいとう)かぶりや
背なの温みで雪融けかかゝる
夜具の黍殻 シッポリ濡れて
結びかねたる 露營の夢を
月は冷たく顏覗きこむ

命捧げて 出てきた身ゆゑ
死ぬる覺悟で 突喊(とつかん)すれど
武運拙く 討ち死にせねば
義理に絡めた 恤兵眞緜(じゆつぺいまわた)
そろりそろりと 首締めかゝる
どうせ生かして 還さぬ積もり


「当時の日本の兵站の貧弱さ、苦労話、食事もまともにできない、寝ることもできない、これが軍歌ですか?
雪の進軍も、大東亞戦争時に歌唱禁止になっています」