「軍隊を棄てた国」と言われるコスタリカの防衛力をまとめてみました。
 ついでに隣国との比較、日本との比較も。

 コスタリカは非武装とまでは言えませんが、その驚くべき低武装が明らかです。
 「コスタリカは警察という名で強力な軍隊を持っている」なんて書いている人がたくさんいますが、まったくのねつ造でした。
 私はコスタリカと日本の防衛力は、国家規模との比で言えば同じくらいかと思っていたのですが、大きな間違いでした。
 そして軍事費を教育に回したと言うのが間違っていないことが分かります。
 もう少し詳しい感想を末尾に記します。

 まずわかりやすいように主な各要素を並べます。

人員

 コスタリカ(警察と軍) 8,000人 人口比0.22%

 ニカラグア(軍のみ)  14.000人 人口比0.26%

 日本(警察と自衛隊) 792,500人 人口比0.67%

予算

 コスタリカ(警察と軍) 予算の5%

 ニカラグア(軍のみ)  予算の11%

 日本(警察と自衛隊)  一般会計予算の11.2% 税収の18.4%

 だいたいこういう感じなんですが、細かい中身は以下のとおり。

コスタリカ

 人員
    常備軍はない。
    ただし有事の際に国会の承認があれば大統領が徴兵を布告出来る。 
    8,000人の警察組織のうち、2,000人が国境警備隊。
    麻薬捜査と取り締まりのため、幹部は米軍と台湾軍特殊部隊の教練に参加している。
    人口 381万人(警察官の人口比 0.22%)
フォト主力航空戦力MD-500e3機    
 装備 
    海上警備隊は哨戒艇。
    国境警備隊はヘリ3機とセスナ4機、小型輸送機1機。
フォト航空戦力のセスナ4機
    個人装備は小銃、機関銃、携行式対戦車ロケット砲。
フォトコスタリカ地上部隊で最も強力な対戦車ロケット
 予算
    常備軍がないので警察予算でまかなっている。 
    警察を含めて1億3,200万ドル(2007年)。国家予算の5%。教育予算の1/4。
フォトコスタリカ最大の戦力。虎の子の輸送機1機

隣国ニカラグアとの比較

 人員 
    14,000人(陸軍12,000人、空軍1,200人、海軍800人)
    1980年代には約10万人だった。
    警察力は不明
    人口 535万人(軍の人口比 0.26%) 
フォトニカラグアのMBT T55戦車127両
 装備(風棲さんがコメント欄に詳しく書いてくれてます)
    陸軍 T55戦車、装甲車、カチューシャロケット多数、小銃、機関銃、携行対戦車ロケット砲、その他大砲や迫撃砲多数。

    空軍 An-2(アントノフ)6機、S-58T輸送ヘリ、ヒューズ偵察ヘリ、OH6A偵察ヘリ2機、Mi-2輸送機6機、Mi-8武装ヘリ18機、Mi-24ハインド攻撃ヘリ10機
    海軍 不明
フォト空の主力 Mi-17武装ヘリ
 予算 
    3600万ドル(2007年) 国家予算の11%
    警察予算は不明
フォト地上制圧兵器 多連装ロケットカチューシャ33門

いやはや、写真見ただけで、両国の戦力が隔絶しているのがわかります。
これでよくコスタリカは低軍備で不安を覚えないもんだなあ。
ほとほとその胆力に感心します。
よほどその平和政策に自信がなければできないことです。
日本も頭の切り替えが必要だなあ。

日本との比較

 人員 
    警察官 542,500人
    自衛官 250,000人
    海上保安官 12,000人
    合計  804,500人
    人口1億2000万人 人口比0.67%(コスタリカの三倍)
    自衛隊・海保のみなら0,21%

 予算 
    警察庁 3兆6,000億円以上
    警視庁   6,300億円
    自衛隊 4兆8,000億円
    海上保安庁 1,500億円
    合計  9兆1,800億円
    一般会計81・8兆円の11.2% 税収50兆円の18.4%
教育予算の2/3

感想
 さて、近年の中南米諸国の変化には目を見張るものがあります。
 その理由のひとつに、コスタリカの成功があると考えるのは不当でしょうか。
 開発途上国でありながらコスタリカは先進国並みの社会保障制度が実現したのですから、他国も自分たちだって出来ると自信を深めたとしても、不思議ではない。
 人口の1/4にも達する難民を国内に受け入れつつ、その難民にも無料の教育・医療サービスを続けているというのは、信じがたいものがあります。
 さすがにこれは国家財政にかなりの負担をもたらしているそうですが。
 
 その成功のカギは二度にわたるドラスティックな軍縮でした。

 「安定は軍事バランスによって保たれている、だから一方的な軍縮は地域の不安定化要因となる」などという馬鹿げた意見があります。
 コスタリカの軍縮は地域の不安定化要因になりませんでした。
 そしてコスタリカは、軍縮による安全保障度の低下を補うため、地域的安定保障措置の構築を提案し、推進してきました。
 このことが他国の国際関係をも安定化させているのは、紛れもない事実です。

 これらの事態は現在も進行中ですから、さまざまな紆余曲折は必至です。
 今後も行きつ戻りつするでしょう。
 皮肉屋たちは「行きつ戻りつ」の「行きつ」を見ては、まだ足りない、口ばっかりだと批評します。
 「戻りつ」を見ては、それ見ろ、二枚舌だ、実現不可能だと批評します。
 しかしそんな批評を百年してたって事態が変わらないことを中南米の人たちは身を以て知っていますから、これからも前進の努力を続けるでしょう。
 私は彼らを見習いたいと思っています。

コスタリカ憲法第12条
 恒久制度としての軍隊は廃止する。
 公共秩序の監視と維持のために必要な警察力は保持する。
 大陸間協定又は国防のためにのみ、軍隊を組織することができる。
 いずれの場合も文民権力に常に従属し、単独又は共同して、審議することも声明又は宣言を出すこともできない。

第31条
コスタリカの領土は、政治的理由で迫害を受けているすべての人の避難所である。

第121条
政府評議会の要請を承認するには国会の3分の2以上の賛成を要する。

(政府評議会は大統領と閣僚によって構成される。政府評議会はつぎの承認を要請出来る。)

第147条
国家防衛非常事態の宣言。徴兵の承認。