「泥憲和

街頭にて

突然飛び入りでマイクを貸してもらいました。
集団的自衛権に反対なので、その話をします。
私は元自衛官で、防空ミサイル部隊に所属していました。
日本に攻めて来る戦闘機を叩き落とすのが任務でした。

いま、尖閣の問題とか、北朝鮮のミサイル問題とか、不安じゃないですか。
でも、そういったものには、自衛隊がしっかりと対処します。
自衛官は命をかけて国民をしっかり守ります。
そこは、安心してください。

いま私が反対している集団的自衛権とは、そういうものではありません。
日本を守る話ではないんです。
売られた喧嘩に正当防衛で対抗するというものではないんです。
売られてもいない他人の喧嘩に、こっちから飛び込んでいこうというんです。
それが集団的自衛権なんです。
なんでそんなことに自衛隊が使われなければならないんですか。
縁もゆかりもない国に行って、恨みもない人たちを殺してこい、
安倍さんはこのように自衛官に言うわけです。
君たち自衛官も殺されて来いというのです。
冗談ではありません。
自分は戦争に行かないくせに、安倍さんになんでそんなこと言われなあかんのですか。
なんでそんな汚れ仕事を自衛隊が引き受けなければならないんですか。
自衛隊の仕事は日本を守ることですよ。
見も知らぬ国に行って殺し殺されるのが仕事なわけないじゃないですか。

みなさん、集団的自衛権は他人の喧嘩を買いに行くことです。
他人の喧嘩を買いに行ったら、逆恨みされますよね。
当然ですよ。
だから、アメリカと一緒に戦争した国は、かたっぱしからテロに遭ってるじゃないですか。
イギリスも、スペインも、ドイツも、フランスも、みんなテロ事件が起きて市民が何人も殺害されてるじゃないですか。

みなさん、軍隊はテロを防げないんです。
世界最強の米軍が、テロを防げないんですよ。
自衛隊が海外の戦争に参加して、日本がテロに狙われたらどうしますか。
みゆき通りで爆弾テロがおきたらどうします。
自衛隊はテロから市民を守れないんです。
テロの被害を受けて、その時になって、自衛隊が戦争に行ってるからだと逆恨みされたんではたまりませんよ。
だから私は集団的自衛権には絶対に反対なんです。

安部総理はね、外国で戦争が起きて、避難してくる日本人を乗せたアメリカ軍の船を自衛隊が守らなければならないのに、いまはそれができないからおかしいといいました。
みなさん、これ、まったくのデタラメですからね。
日本人を米軍が守って避難させるなんてことは、絶対にありません。
そのことは、アメリカ国防省のホームページにちゃんと書いてあります。
アメリカ市民でさえ、軍隊に余力があるときだけ救助すると書いてますよ。

ベトナム戦争の時、米軍は自分だけさっさと逃げ出しました。
米軍も、どこの国の軍隊も、いざとなったら友軍でさえ見捨てますよ。
自分の命の方が大事、当たり前じゃないですか。
そのとき、逃げられなかった外国の軍隊がありました。
どうしたと思いますか。
軍隊が、赤十字に守られて脱出したんです。
そういうものなんですよ、戦争というのは。

安倍さんは実際の戦争のことなんかまったくわかってません。
絵空事を唱えて、自衛官に戦争に行って来いというんです。
自衛隊はたまりませんよ、こんなの。

みなさん、自衛隊はね、強力な武器を持ってて、それを使う訓練を毎日やっています。
一発撃ったら人がこなごなになって吹き飛んでしまう、そういうものすごい武器を持った組織なんです。
だから、自衛隊は慎重に慎重を期して使って欲しいんです。
私は自衛隊で、「兵は凶器である」と習いました。
使い方を間違ったら、取り返しがつきません。
ろくすっぽ議論もしないで、しても嘘とごまかしで、国会を乗り切ることはできるでしょう。
でもね、戦場は国会とは違うんです。
命のやり取りをする場所なんです。
そのことを、どうか真剣に、真剣に考えてください。

みなさん、閣議決定で集団的自衛権を認めてもですよ、
この国の主人公は内閣と違いますよ。
国民ですよ。
みなさんですよ。
憲法をねじ曲げる権限が、たかが内閣にあるはずないじゃないですか。
安倍さんは第一回目の時、病気で辞めましたよね。
体調不良や病気という個人のアクシデントでつぶれるのが内閣ですよ。
そんなところで勝手に決めたら日本の国がガラリと変わる、そんなことできません。

これからが正念場です。
だから一緒に考えてください。
一緒に反対してください。
選挙の時は、集団的自衛権に反対している政党に投票してください。
まだまだ勝負はこれからです。
戦後69年も続いた平和を、崩されてたまるもんですか。
しっかりと考えてくださいね。
ありがとうございました。」


まず、日本を守るって侵略者がいて交戦になる事でしょう?

それで、集団的自衛権に反対しても、ちょっと意味不明です


ハーグ陸戦協定だと

陸戰ノ法規慣例ニ關スル條約


1907年10月18日 オランダ ハーグ

陸戰ノ法規慣例ニ關スル條約 (明治四五、一、一三 條約第四号)

朕樞密顧問ノ諮詢ヲ経テ明治四十年十月十八日和蘭【オランダ】國海牙【ハーグ】ニ於テ第二囘萬國平和曾議ニ賛同シタル帝國及各國全權委員ノ間ニ議定シ帝國 全權委員カ第四十四條ヲ留保シテ署名シタル陸戦ノ法規慣例ニ關スル條約ヲ批准シ茲ニ之ヲ公布セシム(総理、外務大臣副署)

     陸戰ノ法規慣例ニ關スル條約

 一九〇七年(明四十年)十月十八日海牙ニ於テ調印
 一九一一年(明四十四年)十一月六日批准
 同年十二月十三日批准書来ル
 一九一二年(明四十五年)一月十三日公布

独逸皇帝陛下普魯西國皇帝陛下(以下締約國元首名略)ハ、平和ヲ維持シ且諸國間ノ戰争ヲ防止スルノ方法ヲ講スルト同時ニ、其ノ所期ニ反シ避クルコト能ハサ ル事件ノ爲兵力ニ訴フルコトアルヘキ場合ニ付攻究ヲ爲スノ必要ナルコトヲ考慮シ、斯ノ如キ非常ノ場合ニ於テモ尚能ク人類ノ福利ト文明ノ駸々トシテ止ムコト ナキ要求トニ副ハムコトヲ希望シ、之カ爲戰争ニ關スル一般ノ法規慣例ハ一層之ヲ精確ナラシムルヲ目的トシ、又ハ成ルヘク戰争ノ惨害ヲ減殺スヘキ制限ヲ設ク ルヲ目的トシテ、之ヲ修正スルノ必要ヲ認メ、千八百七十四年ノ比律悉会議ノ後ニ於テ、聰明仁慈ナル先見ヨリ出テタル前記ノ思想ヲ體シテ、陸戰ノ慣習ヲ制定 スルヲ以テ目的トスル諸條規ヲ採用シタル第一囘平和会議ノ事業ヲ或点ニ於テ補充シ、且精確ニスルヲ必要ト判定セリ。
締約國ノ所見ニ依レハ、右條規ハ、軍事上ノ必要ノ許ス限、努メテ戰争ノ惨害ヲ軽減スルノ希望ヲ以テ定メラレタルモノニシテ、交戰者相互間ノ關係及人民トノ關係ニ於テ、交戰者ノ行動ノ一般ノ準縄タルヘキモノトス。
但シ、實際ニ起ル一切ノ場合ニ普ク適用スヘキ規定ハ、此ノ際之ヲ協定シ置クコト能ハサリシト雖、明文ナキノ故ヲ以テ、規定セラレサル総テノ場合ヲ軍隊指揮者ノ擅断ニ委スルハ、亦締約國ノ意思ニ非サリシナリ。
一層完備シタル戰争法規ニ關スル法典ノ制定セラルルニ至ル迄ハ、締約國ハ、其ノ採用シタル條規ニ含マレサル場合ニ於テモ、人民及交戰者カ依然文明國ノ間ニ 存立スル慣習、人道ノ法則及公共良心ノ要求ヨリ生スル國際法ノ原則ノ保護及支配ノ下ニ立ツコトヲ確認スルヲ以テ適當ト認ム。
締約國ハ、採用セラレタル規則ノ第一條及第二條ハ、特ニ右ノ趣旨ヲ以テ之ヲ解スヘキモノナルコトヲ宣言ス。
締約國ハ、之カ爲新ナル條約ヲ締結セムコトヲ欲シ、各左ノ全權委員ヲ任命セリ。
 (全權委員名略)
因テ各全權委員ハ、其ノ良好妥當ナリト認メラレタル委任状ヲ寄託シタル後、左ノ條項ヲ協定セリ。

  
第一條 締約國ハ、其ノ陸軍軍隊ニ對シ、本條約ニ附屬スル陸戰ノ法規慣例ニ關スル規則ニ適合スル訓令ヲ発スヘシ。
第二條 第一條ニ掲ケタル規則及本條約ノ規定ハ、交戰國カ悉ク本條約ノ當事者ナルトキニ限締約國間ニノミ之ヲ適用ス。
第三條 前記規則ノ條項ニ違反シタル交戰當事者ハ、損害アルトキハ、之カ賠償ノ責ヲ負フヘキモノトス。交戰當事者ハ、其ノ軍隊ヲ組成スル人員ノ一切ノ行爲ニ付責任ヲ負フ。
第四條 本條約ハ、正式ニ批准セラレタル上、締約國間ノ關係ニ於テハ、陸戰ノ法規慣例ニ關スル千八百九十九年七月二十九日ノ條約ニ代ルヘキモノトス。

千八百九十九年ノ條約ハ、該條約ニ記名シタルモ、本條約ヲ批准セサル諸國間ノ關係ニ於テハ、依然効力ヲ有スルモノトス。
第五條 本條約ハ、成ルヘク、速ニ批准スヘシ、

批准書ハ、海牙ニ寄託ス。

第一囘ノ批准書寄託ハ、之ニ加リタル諸國ノ代表者及和蘭國政府外務大臣ノ署名シタル調書ヲ以テ之ヲ證ス。

爾後ノ批准書寄託ハ、和蘭國政府ニ宛テ、且批准書ヲ添附シタル通告書ヲ以テ之ヲ爲ス。

第一囘ノ批准書寄託ニ關スル調書、前項ニ掲ケタル通告書及批准書ノ認證謄本ハ、和蘭國政府ヨリ、外交上ノ手 續ヲ以テ、直ニ之ヲ第二囘平和会議ニ招請セラレタル諸國及本條約ニ加盟スル他ノ諸國ニ交付スヘシ。前項ニ掲ケタル場合ニ於テハ、和蘭國政府ハ、同時ニ通告 書ヲ接受シタル日ヲ通知スルモノトス。
第六條 記名國ニ非ラサル諸國ハ、本條約ニ加盟スルコトヲ得。

加盟セムト欲スル國ハ、書面ヲ以テ、其ノ意思ヲ和蘭國政府ニ通告シ、且加盟書ヲ送付シ、之ヲ和蘭國政府ノ文庫ニ寄託スヘシ。

和蘭國政府ハ、直ニ通告書及加盟書ノ認證謄本ヲ爾餘ノ諸國ニ送付シ、且右通告書ヲ接受シタル日ヲ通知スヘシ。
第七條 本條約ハ、第一囘ノ批准書寄託ニ加リタル諸國ニ對シテハ、其ノ寄託ノ調書ノ日附ヨリ六十日ノ後、又其ノ後ニ批准シ又ハ加盟スル諸國ニ對シテハ、和蘭國政府カ右批准書又ハ加盟ノ通告ヲ接受シタルトキヨリ六十日ノ後ニ、其ノ効力ヲ生スルモノトス。
第八條 締約國中本條約ヲ廃棄セムト欲スルモノアルトキハ、書面ヲ以テ、其ノ旨和蘭國政府ニ通告スヘシ。和蘭國政府ハ、直ニ通告書ノ認證謄本ヲ爾餘ノ諸國ニ送付シ、且右通告書ヲ接受シタル日ヲ通知スヘシ。

廃棄ハ、其ノ通告書カ和蘭國政府ニ到達シタルトキヨリ一年ノ後、右通告ヲ爲シタル國ニ對シテノミ、効力ヲ生スルモノトス。
第九條 和蘭國外務省ハ、帳簿ヲ備ヘ置キ、第五條第三項及第四項ニ依リ爲シタル批准書寄託ノ日並加盟(第六條第二項)又ハ廃棄(第八條第一項)ノ通告ヲ接受シタル日ヲ記入スルモノトス。

各締約國ハ、右帳簿ヲ閲覧シ、且其ノ認證抄本ヲ請求スルコトヲ得。

  右證據トシテ、各全權委員本條約ニ署名ス。

   (全權委員署名略)
   日夲國 佐藤愛麿

 留保
  独逸国 附屬規則第四十四條ヲ留保ス。
  墺地利・洪牙利国 千九百七年八月十七日ノ総会議ニ於テ為シタル宣言ヲ留保ス。
  日本国 第四十四條ヲ留保ス。
  「モンテネグロ」国 本條約附屬規則第四十四條ニ關シテ表明シ、且千九百七年八月十七日ノ第四囘総会議議事録ニ記入セラレタル留保ヲ為ス。
  露西亜国 本條約附屬規則第四十四條ニ關シテ表明シ、且千九百七年八月十七日ノ第四囘総会議議事録ニ記入セラレタル留保ヲ為ス。
  土耳其国 第三條ヲ留保ス。


 條約附屬書

 陸戰ノ法規慣例ニ關スル規則

第一款 交戰者
第一章 交戰者ノ資格
第一條 戰争ノ法規及權利義務ハ、單ニ之ヲ軍ニ適用スルノミナラス、左ノ條件ヲ具備スル民兵及義勇兵團ニモ亦之ヲ適用ス。

(1)部下ノ爲ニ責任ヲ負フ者其ノ頭ニ在ルコト

(2)遠方ヨリ認識シ得ヘキ固著ノ特殊徽章ヲ有スルコト

(3)公然兵器ヲ携帯スルコト

(4)其ノ動作ニ付戰争ノ法規慣例ヲ遵守スルコト

民兵又ハ義勇兵團ヲ以テ軍ノ全部又ハ一部ヲ組織スル國ニ在テハ、之ヲ軍ノ名称中ニ包含ス。
第二條 占領セラレサル地方ノ人民ニシテ、敵ノ接近スルニ當リ、第一條ニ依リテ編成ヲ爲スノ遑ナク、侵入軍隊ニ抗敵スル爲自ラ兵器ヲ操ル者カ公然兵器ヲ携帯シ、且戰争ノ法規慣例ヲ遵守スルトキハ、之ヲ交戰者ト認ム。
第三條 交戰當事者ノ兵力ハ、戰闘員及非戰闘員ヲ以テ之ヲ編成スルコトヲ得。敵ニ捕ハレタル場合ニ於テハ、二者均シク俘虜ノ取扱ヲ受クルノ權利ヲ有ス。

第二章 俘虜
第四條 俘虜ハ、敵ノ政府ノ權内ニ屬シ、之ヲ捕ヘタル個人又ハ部隊ノ權内ニ屬スルコトナシ。

俘虜ハ、人道ヲ以テ取扱ハルヘシ。

俘虜ノ一身ニ屬スルモノハ、兵器、馬匹及軍用書類ヲ除クノ外、依然其ノ所有タルヘシ。
第五條 俘虜ハ、一定ノ地域外ニ出テサル義務ヲ負ハシメテ之ヲ都市、城寨、陣營其ノ他ノ場所ニ留置スルコトヲ得。但シ、已ムヲ得サル保安手段トシテ、且該手段ヲ必要トスル事情ノ繼續中ニ限、之ヲ幽閉スルコトヲ得。
第六條 國家ハ、将校ヲ除クノ外、俘虜ヲ其ノ階級及技能ニ應シ勞務者トシテ使役スルコトヲ得。其ノ勞務ハ、過度ナルヘカラス、又一切作戰動作ニ關係ヲ有スヘカラス。

俘虜ハ、公務所、私人又ハ自己ノ爲ニ勞務スルコトヲ許可セラルルコトアルヘシ。

國家ノ爲ニスル勞務ニ付テハ、同一勞務ニ使役スル内國陸軍軍人ニ適用スル現行定率ニ依リ支払ヲ爲スヘシ。右定率ナキトキハ、其ノ勞務ニ對スル割合ヲ以テ支払フヘシ。

公務所又ハ私人ノ爲ニスル勞務ニ關シテハ、陸軍官憲ト協議ノ上條件ヲ定ムヘシ。

俘虜ノ勞銀ハ、其ノ境遇ノ艱苦ヲ軽減スルノ用ニ供シ、剰餘ハ、解放ノ時給養ノ費用ヲ控除シテ之ヲ俘虜ニ交付スヘシ。
第七條 政府ハ、其ノ權内ニ在ル俘虜ヲ給養スヘキ義務ヲ有ス。

逃走シタル俘虜ニシテ其ノ軍ニ達スル前又ハ之ヲ捕ヘタル軍ノ占領シタル地域ヲ離ルルニ先チ再ヒ捕ヘラレタル者ハ、懲罰ニ付セラルヘシ。
第八條 俘虜ハ、之ヲ其ノ權内ニ屬セシメタル國ノ陸軍現行法律、規則及命令ニ服従スヘキモノトス。総テ不従順ノ行爲アルトキハ、俘虜ニ對シ必要ナル嚴重手段ヲ施スコトヲ得。

逃走シタル俘虜ニシテ其ノ軍ニ達スル前又ハ之ヲ捕ヘタル軍ノ占領シタル地域ヲ離ルルニ先チ再ヒ捕ヘラレタル者ハ、懲罰ニ付セラルヘシ。

俘虜逃走ヲ遵ケタル後再ヒ俘虜ト爲リタル者ハ、前ノ逃走ニ對シテハ何等ノ罰ヲ受クルコトナシ。
第九條 俘虜其ノ氏名及階級ニ付訊問ヲ受ケタルトキハ、實ヲ以テ答フヘキモノトス。若此ノ規定ニ背クトキハ、同種ノ俘虜ニ与ヘラルヘキ力ヲ減殺セラルルコトアルヘシ。
第十條 俘虜ハ、其ノ本國ノ法律カ之ヲ許ストキハ、宣誓ノ後解放セラルルコトアルヘシ。此ノ場合ニ於テハ、本國政府及之ヲ捕ヘタル政府ニ對シ、一身ノ名譽ヲ賭シテ、其ノ誓約ヲ嚴密ニ履行スルノ義務ヲ有ス。

前項ノ場合ニ於テ、俘虜ノ本國政府ハ、之ニ對シ其ノ宣誓ニ違反スル勤務ヲ命シ、又ハ之ニ服セムトノ申出ヲ受諾スヘカラサルモノトス。
第一一條 俘虜ハ、宣誓解放ノ受諾ヲ強制セラルルコトナク、又敵ノ政府ハ、宣誓解放ヲ求ムル俘虜ノ請願ニ應スルノ義務ナシ。
第一二條 宣誓解放ヲ受ケタル俘虜ニシテ、其ノ名譽ヲ賭シテ誓約ヲ爲シタル政府又ハ其ノ政府ノ同盟國ニ對シテ兵器ヲ操リ、再ヒ捕ヘラレタル者ハ、俘虜ノ取扱ヲ受クルノ權利ヲ失フヘク、且裁判ニ付セラルルコトアルヘシ。
第一三條 新聞ノ通信員及探訪者並酒保用達人等ノ如キ、直接ニ軍ノ一部ヲ爲ササル従軍者ニシテ、敵ノ權内ニ陥リ、敵ニ於テ之ヲ抑留スルヲ有益ナリト認メタル者ハ、其ノ所屬陸軍官憲ノ證明書ヲ携帯スル場合ニ限リ、俘虜ノ取扱ヲ受クルノ權利ヲ有ス。
第一四條 各交戰國ハ、戰争開始ノ時ヨリ、又中立國ハ、交戰者ヲ其ノ領土ニ収容シタル時ヨリ、俘虜情報局ヲ設置ス。情 報局ハ、俘虜ニ關スル一切ノ問合ニ答フルノ任務ヲ有シ、俘虜ノ留置、移動、宣誓解放、交換、逃走、入院、死亡ニ關スル事項其ノ他各俘虜ニ關シ銘々票ヲ作成 補修スル爲ニ、必要ナル通報ヲ各當該官憲ヨリ受クルモノトス。情報局ハ、該票ニ番号、氏名、年齢、本籍地、階級、所屬部隊、負傷並捕獲、留置負傷及死亡ノ 日附及場所其ノ他一切ノ備考事項ヲ記載スヘシ。銘々票ハ、平和克復ノ後之ヲ他方交戰國ノ政府ニ交付スヘシ。

情報局ハ、又宣誓解放セラレ交換セラレ逃走シ又ハ病院若ハ繃帯所ニ於テ死亡シタル俘虜ノ遺留シ並戰場ニ於テ発見セラレタル一切ノ自用品、有価物、信書等ヲ収拾シテ、 之ヲ其ノ關係者ニ伝送スルノ任務ヲ有ス。
第一五條 慈善行爲ノ媒介者タル目的ヲ以テ、自國ノ法律ニ従ヒ正式ニ組織セラレタル俘虜救恤協会ハ、其ノ人道的事業ヲ 有効ニ遵行スル爲、軍事上ノ必要及行政上ノ規則ニ依リテ定メラレタル範囲内ニ於テ、交戰者ヨリ自己及其ノ正當ノ委任アル代表者ノ爲ニ一切ノ便宜ヲ受クヘ シ。右協会ノ代表者ハ、各自陸軍官憲ヨリ免許状ノ交付ヲ受ケ、且該官憲ノ定メタル秩序及風紀ニ關スル一切ノ規律ニ服従スヘキ旨書面ヲ以テ約シタル上、俘虜 収容所及送還俘虜ノ途中休泊所ニ於テ救恤品ヲ分与スルコトヲ許サルヘシ。
第一六條 情報局ハ、郵便料金ノ免除ヲ享ク。俘虜ニ宛テ又ハ其ノ発シタル信書、郵便爲替、有価物件及小包郵便物ハ、差出國、名宛國及通過國ニ於テ一切ノ郵便料金ヲ免除セラルヘシ。

俘虜ニ宛テタル贈与品及救恤品ハ、輸入税其ノ他ノ諸税及國有鉄道ノ運賃ヲ免除セラルヘシ。
第一七條 俘虜将校ハ、其ノ抑留セラルル國ノ同一階級ノ将校カ受クルト同額ノ俸給ヲ受クヘシ。右俸給ハ、其ノ本國政府ヨリ償還セラルヘシ。
第一八條 俘虜ハ、陸軍官憲ノ定メタル秩序及風紀ニ關スル規律ニ服従スヘキコトヲ唯一ノ條件トシテ、其ノ宗教ノ遵行ニ付一切ノ自由ヲ与ヘラレ、其ノ宗教上ノ礼拝式ニ参列スルコトヲ得。
第一九條 俘虜ノ遺言ハ、内國陸軍軍人ト同一ノ條件ヲ以テ之ヲ領置シ、又ハ作成ス。

俘虜ノ死亡ノ證明ニ關スル書類及埋葬ニ關シテモ、亦同一ノ規則ニ遵ヒ、其ノ階級及身分ニ相當スル取扱ヲ爲スヘシ。
第二〇條 平和克復ノ後ハ、成ルヘク速ニ俘虜ヲ其ノ本國ニ帰還セシムヘシ。

第三章 病者及傷者

  第二一條 病者及傷者ノ取扱ニ關スル交戰者ノ義務ハ、「ジェネヴァ」條約ニ依ル。


第二款 戰闘

第一章 害敵手段、攻囲及砲撃
第二二條 交戰者ハ、害敵手段ノ選択ニ付、無制限ノ權利ヲ有スルモノニ非ス。
第二三條 特別ノ條約ヲ以テ定メタル禁止ノ外、特ニ禁止スルモノ左ノ如シ。

(イ)毒又ハ毒ヲ施シタル兵器ヲ使用スルコト

(ロ)敵國又ハ敵軍ニ屬スル者ヲ背信ノ行爲ヲ以テ殺傷スルコト

(ハ)兵器ヲ捨テ又ハ自衛ノ手段盡キテ降ヲ乞ヘル敵ヲ殺傷スルコト

(ニ)助命セサルコトヲ宣言スルコト

(ホ)不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物質ヲ使用スルコト

(ヘ)軍使旗、國旗其ノ他ノ軍用ノ標章、敵ノ制服又ハ、「ジェネヴァ」條約ノ特殊徽章ヲ擅ニ使用スルコト

(ト)戰争ノ必要上万已ヲ得サル場合ヲ除クノ外敵ノ財産ヲ破壊シ又ハ押収スルコト

(チ)對手當事國國民ノ權利及訴權ノ消滅、停止又ハ裁判上不受理ヲ宣言スルコト

交戰者ハ、又對手當事國ノ國民ヲ強制シテ其ノ本國ニ對スル作戰動作ニ加ラシムコトヲ得ス。戰争開始前其ノ役務ニ服シタルト雖亦同シ。
第二四條 奇計並敵情及地形探知ノ爲必要ナル手段ノ行使ハ、適法ト認ム。
第二五條 防守セサル都市、村落、住宅又ハ建物ハ、如何ナル手段ニ依ルモ、之ヲ攻撃又ハ砲撃スルコトヲ得ス。
第二六條 攻撃軍隊ノ指揮官ハ、強襲ノ場合ヲ除クノ外、砲撃ヲ始ムルニ先チ其ノ旨官憲ニ通告スル爲、施シ得ヘキ一切ノ手段ヲ盡スヘキモノトス。
第二七條 攻囲及砲撃ヲ爲スニ當リテハ、宗教、技芸、学術及慈善ノ用ニ供セラルル建物、歴史上ノ記念建造物、病院並病者及傷者ノ収容所ハ、同時ニ軍事上ノ目的ニ使用セラレサル限、之ヲシテ成ルヘク損害ヲ免レシムル爲、必要ナル一切ノ手段ヲ執ルヘキモノトス。

被囲者ハ、看易キ特別ノ徽章ヲ以テ、右建物又ハ収容所ヲ表示スルノ義務ヲ負フ。右徽章ハ予メ之ヲ攻囲者ニ通告スヘシ。
第二八條 都市其ノ他ノ地域ハ、突撃ヲ以テ攻取シタル場合ト雖、之ヲ略奪ニ委スルコトヲ得ス。


第二章 間諜
第二九條 交戰者ノ作戰地帯内ニ於テ、對手交戰者ニ通報スルノ意思ヲ以テ、隠密ニ又ハ虚偽ノ口實ノ下ニ行動シテ、情報ヲ蒐集セムトスル者ニ非サレハ、之ヲ間諜ト認ムルコトヲ得ス。

故ニ変装セサル軍人ニシテ情報ヲ蒐集セムカ爲敵軍ノ作戰地帯内ニ進入シタル者ハ、間諜ト認メス。又、軍人タルト否トヲ問ハス、自國軍又ハ敵軍ニ宛テタル通信ヲ伝達スルノ任務ヲ公然執行スル者モ亦之ヲ間諜ト認メス。通信ヲ伝達スル爲、及総テ軍
第三〇條 現行中捕ヘラレタル間諜ハ、裁判ヲ経ルニ非サレハ、之ヲ罰スルコトヲ得ス。
第三一條 一旦所屬軍ニ復帰シタル後ニ至リ敵ノ爲ニ捕ヘラレタル間諜ハ、俘虜トシテ取扱ハルヘク、前ノ間諜行爲ニ對シテハ、何等ノ責ヲ負フコトナシ。


第三章 軍使
第三二條 交戰者ノ一方ノ命ヲ帯ヒ、他ノ一方ト交渉スル爲、白旗ヲ掲ケテ来ル者ハ、之ヲ軍使トス。軍使並之ニ随従スル喇叭手、鼓手、旗手及通訳ハ、不可侵權ヲ有ス。
第三三條 軍使ヲ差向ケラレタル部隊長ハ、必シモ之ヲ受クルノ義務ナキモノトス。

部隊長ハ、軍使カ軍情ヲ探知スル爲其ノ使命ヲ利用スルヲ防クニ必要ナル一切ノ手段ヲ執ルコトヲ得。

濫用アリタル場合ニ於テハ、部隊長ハ、一時軍使ヲ抑留スルコトヲ得。
第三四條 軍使カ背信ノ行爲ヲ教唆シ、又ハ自ラ之ヲ行フ爲其ノ特權アル地位ヲ利用シタルノ證迹明確ナルトキハ、其ノ不可侵權ヲ失フ。


第四章 降伏規約
第三五條 締約當事者間ニ協定セラルル降伏規約ニハ、軍人ノ名譽ニ關スル例規ヲ参酌スヘキモノス。

降伏規約一旦確定シタル上ハ、當事者双方ニ於テ嚴密ニ之ヲ遵守スヘキモノトス。


第五章 休戰
第三六條 休戰ハ、交戰當事者ノ合意ヲ以テ作戰動作ヲ停止ス。若其ノ期間ノ定ナキトキハ、交戰當事者ハ、何時ニテモ再ヒ動作ヲ開始スルコトヲ得。但シ、休戰ノ條件ニ遵依シ、所定ノ時期ニ於テ其ノ旨敵ニ通告スヘキモノトス。
第三七條 休戰ハ、全般的又ハ部分的タルコトヲ得。全般的休戰ハ、普ク交戰國ノ作戰動作ヲ停止シ、部分的休戰ハ、單ニ特定ノ地域ニ於テ交戰軍ノ或部分間ニ之ヲ停止スルモノトス。
第三八條 休戰ハ、正式ニ且適當ノ時期ニ於テ之ヲ當該官憲及軍隊ニ通告スヘシ。

通告ノ後直ニ又ハ所定ノ時期ニ至リ、戰闘ヲ停止ス。
第三九條 戰地ニ於ケル交戰者ト人民トノ間及人民相互間ノ關係ヲ休戰規約ノ條項中ニ規定スルコトハ、當事者ニ一任スルモノトス。
第四〇條 當事者ノ一方ニ於テ休戰規約ノ重大ナル違反アリタルトキハ、他ノ一方ハ、規約廃棄ノ權利ヲ有スルノミナラス、緊急ノ場合ニ於テハ、直ニ戰闘ヲ開始スルコトヲ得。
第四一條 個人カ自己ノ発意ヲ以テ休戰規約ノ條項ニ違反シタルトキハ、唯其ノ違反者ノ処罰ヲ要求シ、且損害アリタル場合ニ賠償ヲ要求スルノ權利ヲ生スルニ止ルヘシ。


第三款 敵國ノ領土ニ於ケル軍ノ權力
第四二條 一地方ニシテ事實上敵軍ノ權力内ニ帰シタルトキハ、占領セラレタルモノトス。

占領ハ右權力ヲ樹立シタル且之ヲ行使シ得ル地域ヲ以テ限トス。
第四三條 國ノ權力カ事實上占領者ノ手ニ移リタル上ハ、占領者ハ、絶對的ノ支障ナキ限、占領地ノ現行法律ヲ尊重シテ、成ルヘク公共ノ秩序及生活ヲ囘復確保スル爲施シ得ヘキ一切ノ手段ヲ盡スヘシ。
第四四條 交戰者ハ、占領地ノ人民ヲ強制シテ他方ノ交戰者ノ軍又ハ其ノ防禦手段ニ付情報ヲ供与セシムルコトヲ得ス。
第四五條 占領地ノ人民ハ、之ヲ強制シテ其ノ敵國ニ對シ忠誠ノ誓ヲ爲サシムルコトヲ得ス。
第四六條 家ノ名譽及權利、個人ノ生命、私有財産並宗教ノ信仰及其ノ遵行ハ、之ヲ尊重スヘシ。

私有財産ハ、之ヲ没収スルコトヲ得ス。
第四七條 掠奪ハ、之ヲ嚴禁ス。
第四八條 占領者カ占領地ニ於テ國ノ爲ニ定メラレタル租税、賦課金及通過税ヲ徴収スルトキハ、成ルヘク現行ノ賦課規則ニ依リ之ヲ徴収スヘシ。此ノ場合ニ於テハ、占領者ハ、國ノ政府カ支辯シタル程度ニ於テ占領地ノ行政費ヲ支辯スルノ義務アルモノトス。
第四九條 占領者カ占領地ニ於テ前條ニ掲ケタル税金以外ノ取立金ヲ命スルハ、軍又ハ占領地行政上ノ需要ニ應スル爲ニスル場合ニ限ルモノトス。
第五〇條 人民ニ對シテハ、連帯ノ責アリト認ムヘカラサル個人ノ行爲ノ爲、金銭上其ノ他ノ連坐罰ヲ科スルコトヲ得ス。
第五一條 取立金ハ、総テ総指揮官ノ命令書ニ依リ、且其ノ責任ヲ以テスルニ非サレハ、之ヲ徴収スルコトヲ得ス。

取立金ハ、成ルヘク現行ノ租税賦課規則ニ依リ之ヲ徴収スヘシ。一切ノ取立金ニ對シテハ、納付者ニ領収證ヲ交付スヘシ。
第五二條 現品徴発及課役ハ、占領軍ノ需要ノ爲ニスルニ非サレハ、市区町村又ハ住民ニ對シテ之ヲ要求スルコトヲ得ス。徴発及課役ハ、地方ノ資力ニ相應シ、且人民ヲシテ其ノ本國ニ對スル作戰動作ニ加ルノ義務ヲ負ハシメサル性質ノモノタルコトヲ要ス。

右徴発及課役ハ、占領地方ニ於ケル指揮官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ、之ヲ要求スルコトヲ得ス。

現品ノ供給ニ對シテハ、成ルヘク即金ニテ支払ヒ、然ラサレハ領収證ヲ以テ之ヲ證明スヘク、且成ルヘク速ニ之ニ對スル金額ノ支払ヲ履行スヘキモノトス。
第五三條 一地方ヲ占領シタル軍ハ、國ノ所有ニ屬スル現金、基金及有価證券、貯蔵兵器、輸送材料、在庫品及糧秣其ノ他総テ作戰動作ニ供スルコトヲ得ヘキ國有動産ノ外、之ヲ押収スルコトヲ得ス。

海上法ニ依リ支配セラルル場合ヲ除クノ外、陸上、海上及空中ニ於テ報道ノ伝達又ハ人若ハ物ノ輸送ノ用ニ供セ ラルル一切ノ機關、貯蔵兵器其ノ他各種ノ軍需品ハ、私人ニ屬スルモノト雖、之ヲ押収スルコトヲ得。但シ、平和克復ニ至リ、之ヲ還付シ、且之カ賠償ヲ決定ス ヘキモノトス。
第五四條 占領地ト中立地トヲ連結スル海底電線ハ、絶對的ノ必要アル場合ニ非サレハ、之ヲ押収シ又ハ破壊スルコトヲ得ス。右電線ハ、平和克復ニ至リ、之ヲ還付シ、且之カ賠償ヲ決定スヘキモノトス。
第五五條 占領國ハ、敵國ニ屬シ且占領地ニ在ル公共建物、不動産、森林及農場ニ付テハ、其ノ管理者及用益權者タルニ過キサルモノナリト考慮シ、右財産ノ基本ヲ保護シ、且用益權ノ法則ニ依リテ之ヲ管理スヘシ。
第五六條 市区町村ノ財産並國ニ屬スルモノト雖、宗教、慈善、教育、技芸及学術ノ用ニ供セラルル建設物ハ、私有財産ト同様ニ之ヲ取扱フヘシ。

右ノ如キ建設物、歴史上ノ記念建造物、技芸及学術上ノ製作品ヲ故意ニ押収、破壊又ハ毀損スルコトハ、総テ禁セラレ且訴追セラルヘキモノトス。」


うるさいくらい、戦争のルールについて細かく書いています




http://www.mod.go.jp/j/presiding/treaty/geneva/geneva3.html

防衛省のページですよ

捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(第三条約)

昭和二十八年十月二十一日
条約第二十五号

第一編 総則

第一条〔条約の尊重〕

 (第一条約の第一条と同じ。)

第二条〔条約の適用〕

 (第一条約の第二条と同じ。)

第三条〔国際的性質を有しない紛争〕

 (第一条約の第三条と同じ。)

第四条〔捕虜〕

A この条約において捕虜とは、次の部類の一に属する者で敵の権力内に陥ったものをいう。

(1)  紛争当事国の軍隊の構成員及びその軍隊の一部をなす民兵隊又は義勇隊の構成員
(2)  紛争当事国に属するその他の民兵隊及び義勇隊の構成員(組織的抵抗運動団体の構成員を含む。)で、その領域が占領されているかどうかを問わず、 その領域の内外で行動するもの。但し、それらの民兵隊又は義勇隊(組織的抵抗運動団体を含む。)は、次の条件を満たすものでなければならない。
(a)  部下について責任を負う一人の者が指揮していること。

(b)  遠方から認識することができる固着の特殊標章を有すること。

(c)  公然と武器を携行していること。

(d)  戦争の法規及び慣例に従って行動していること。
(3)  正規の軍隊の構成員で、抑留国が承認していない政府又は当局に忠誠を誓ったもの
(4)  実際には軍隊の構成員でないが軍隊に随伴する者、たとえば、文民たる軍用航空機の乗組員従軍記者、需品供給者、労務隊 員又は軍隊の福利機関の構成員等。但し、それらの者がその随伴する軍隊の認可を受けている場合に限る。このため、当該軍隊は、それらの者に附属書のひな型 と同様の身分証明書を発給しなければならない。
(5)  紛争当事国の商船の乗組員(船長、水先人及び見習員を含む。)及び民間航空機の乗組員で、国際法の他のいかなる規定によっても一層有利な待遇の利益を享有することがないもの
(6)  占領されていない領域の住民で、敵の接近に当り、正規の軍隊を編成する時日がなく、侵入する軍隊に抵抗するために自発的に武器を執るもの。但し、それらの者が公然と武器を携行し、且つ、戦争の法規及び慣例を尊重する場合に限る。

B 次の者も、また、この条約に基いて捕虜として待遇しなければならない。

(1)  被占領国の軍隊に所属する者又は当該軍隊に所属していた者で、特に戦闘に従事している所属軍隊に復帰しようとして失敗した場合又は抑留の目的で される召喚に応じなかった場合に当該軍隊への所属を理由として占領国が抑留することを必要と認めるもの。その占領国が、その者を捕虜とした後、その占領す る領域外で敵対行為が行われていた間にその者を解放したかどうかを問わない。
(2)  本条に掲げる部類の一に属する者で、中立国又は非交戦国が自国の領域内に収容しており、且つ、その国が国際法に基いて抑留することを要求される もの。但し、それらの者に対しては、その国がそれらの者に与えることを適当と認める一層有利な待遇を与えることを妨げるものではなく、また、第八条、第十 条、第十五条、第三十条第五項、第五十八条から第六十七条まで、第九十二条及び第百二十六条の規定並びに、紛争当事国と前記の中立国又は非交戦国との間に 外交関係があるときは、この条約の利益保護国に関する規定を適用しないものとする。前記の外交関係がある場合には、それらの者が属する紛争当事国は、それ らの者に対し、この条約で規定する利益保護国の任務を行うことを認められる。但し、当該紛争当事国が外交上及び領事業務上の慣習及び条約に従って通常行う 任務を行うことを妨げない。

C 本条は、この条約の第三十三条に規定する衛生要員及び宗教要員の地位に何らの影響を及ぼすものではない。

第五条〔適用の始期及び終期〕

 この条約は、第四条に掲げる者に対し、それらの者が敵の権力内に陥った時から最終的に解放され、且つ、送還される時までの間、適用する。

 交戦行為を行って敵の権力内に陥った者が第四条に掲げる部類の一に属するかどうかについて疑が生じた場合には、その者は、その地位が権限のある裁判所によって決定されるまでの間、この条約の保護を享有する。

第六条〔特別協定〕

 締約国は、第十条、第二十三条、第二十八条、第三十三条、第六十条、第六十五条、第六十六条、第六十七条、第七十二条、第七十三条、第七十五条、 第百九条、第百十条、第百十八条、第百十九条、第百二十二条及び第百三十二条に明文で規定する協定の外、別個に規定を設けることを適当と認めるすべての事 項について、他の特別協定を締結することができる。いかなる特別協定も、この条約で定める捕虜の地位に不利な影響を及ぼし、又はこの条約で捕虜に与える権 利を制限するものであってはならない。

 捕虜は、この条約の適用を受ける間は、前記の協定の利益を引き続き享有する。但し、それらの協定に反対の明文規定がある場合又は紛争当事国の一方若しくは他方が捕虜について一層有利な措置を執った場合は、この限りでない。

第七条〔権利の不放棄〕

 (第一条約の第七条と同じ。)

第八条〔利益保護国〕

 (第一条約の第八条と同じ。)

第九条〔赤十字国際委員会の活動〕

 (第一条約の第九条と同じ。)

第十条〔利益保護国の代理〕

 (第一条約の第十条と同じ。)

第十一条〔調停手続〕

 (第一条約の第十一条と同じ。)

第二編 捕虜の一般的保護

第十二条〔捕虜の待遇の責任〕

 捕虜は、敵国の権力内にあるものとし、これを捕えた個人又は部隊の権力内にあるものではない。抑留国は、個人の責任があるかどうかを問わず、捕虜に与える待遇について責任を負う。

 捕虜は、抑留国が、この条約の締約国に対し、当該締約国がこの条約を適用する意思及び能力を有することを確認した後にのみ、移送することができる。捕虜が前記により移送されたときは、捕虜を受け入れた国は、捕虜を自国に抑留している間、この条約を適用する責任を負う。
 もっとも、捕虜を受け入れた国がいずれかの重要な点についてこの条約の規定を実施しなかった場合には、捕虜を移送した国は、利益保護国の通告に 基いて、その状態を改善するために有効な措置を執り、又は捕虜の返還を要請しなければならない。この要請には、従わなければならない。

第十三条〔捕虜の人道的待遇〕

 捕虜は常に人道的に待遇しなければならない。抑留国の不法の作為又は不作為で、抑留している捕虜を死に至らしめ、又はその健康に重大な危険を及ぼ すものは、禁止し、且つ、この条約の重大な違反と認める。特に、捕虜に対しては、身体の切断又はあらゆる種類の医学的若しくは科学的実験で、その者の医療 上正当と認められず、且つ、その者の利益のために行われるものでないものを行ってはならない。

 また、捕虜は、常に保護しなければならず、特に、暴行又は脅迫並びに侮辱及び公衆の好奇心から保護しなければならない。
 捕虜に対する報復措置は、禁止する。

第十四条〔捕虜の身体の尊重〕

 捕虜は、すべての場合において、その身体及び名誉を尊重される権利を有する。

 女子は、女性に対して払うべきすべての考慮をもって待遇されるものとし、いかなる場合にも、男子に与える待遇と同等に有利な待遇の利益を受けるものとする。
 捕虜は、捕虜とされた時に有していた完全な私法上の行為能力を保持する。抑留国は、捕虜たる身分のためやむを得ない場合を除く外、当該国の領域の内外においてその行為能力に基く権利の行使を制限してはならない。

第十五条〔捕虜の給養〕

 捕虜を抑留する国は、無償で、捕虜を給養し、及びその健康状態に必要な医療を提供しなければならない。

第十六条〔平等な待遇〕

 階級及び性別に関するこの条約の規定に考慮を払い、また、健康状態、年令又は職業上の能力を理由として与えられる有利な待遇を留保して、捕虜は、 すべて、抑留国が人種、国籍、宗教的信条若しくは政治的意見に基く差別又はこれらに類する基準によるその他の差別をしないで均等に待遇しなければならな い。

第三編 捕虜たる身分

第一部 捕虜たる身分の開始

第十七条〔捕虜の尋問〕

 各捕虜は、尋問を受けた場合には、その氏名、階級及び生年月日並びに軍の番号、連隊の番号、個人番号又は登録番号(それらの番号がないときは、それに相当する事項)については答えなければならない。

 捕虜は、故意に前記の規定に違反したときは、その階級又は地位に応じて与えられる特権に制限を受けることがあるものとする。
 各紛争当事国は、その管轄の下にある者で捕虜となることがあるもののすべてに対し、その氏名、階級、軍の番号、連隊の番号、個人番号若しくは登 録番号又はそれらの番号に相当する事項及び生年月日を示す身分証明書を発給しなければならない。身分証明書には、更に、本人の署名若しくは指紋又はその双 方及び紛争当事国が自国の軍隊に属する者に関し追加することを希望するその他の事項を掲げることができる。身分証明書は、できる限り、縦横がそれぞれ六・ 五センチメートル及び十センチメートルの規格で二部作成するものとする。捕虜は、要求があった場合には、身分証明書を呈示しなければならない。但し身分証 明書は、いかなる場合にも、取り上げてはならない。
 捕虜からいかなる種類の情報を得るためにも、これに肉体的又は精神的拷問その他の強制を加えてはならない。回答を拒む捕虜に対しては、脅迫し、侮辱し、又は種類のいかんを問わず不快若しくは不利益な待遇を与えてはならない。
 肉体的又は精神的状態によって自己が何者であるかを述べることができない捕虜は、衛生機関に引き渡さなければならない。それらの捕虜が何者であるかは、前項の規定に従うことを留保して、すべての可能な力法によって識別して置かなければならない。
 捕虜に対する尋問は、その者が理解する言語で行わなければならない。

第十八条〔捕虜の財産〕

 すべての個人用品(武器、馬、軍用装具及び軍用書類を除く。)及び金属かぶと、防毒面その他の身体の防護のために交付されている物品は、捕虜が引 き続いて所持するものとする。捕虜の衣食のために用いられる物品も、正規の軍用装具に属するかどうかを問わず、捕虜が引き続いて所持するものとする。

 捕虜は、常に身分証明書を携帯しなければならない。抑留国は、身分証明書を所持していない捕虜に対しては、これを与えなければならない。
 階級及び国籍を示す記章、勲章並びに主として個人的又は感情的価値のみを有する物品は、捕虜から取り上げてはならない。
 捕虜が所持する金銭は、将校の命令によってでなければ、且つ、金額及び所持者の詳細を特別の帳簿に記入し、並びに受領証発行人の氏名、階級及び 部隊を読みやすく記載した詳細な受領証を発給した後でなければ、取り上げてはならない。抑留国の通貨で有する額又は捕虜の要請により抑留国の通貨に両替し た額は、第六十四条に定めるところにより、捕虜の勘定に貸記しなければならない。
 抑留国は、安全を理由とする場合にのみ、捕虜から有価物を取り上げることができる。有価物を取り上げる場合には金銭を取り上げる場合について定める手続と同一の手続を適用しなければならない。
 前記の有価物は、捕虜から取り上げた金銭で抑留国の通貨でなく、且つ、所持者からその両替を要請されなかったものとともに、抑留国が保管し、及び捕虜たる身分の終了の際原状で捕虜に返還しなければならない。

第十九条〔捕虜の後送〕

 捕虜は、捕虜とされた後できる限りすみやかに、戦闘地域から充分に離れた危険の圏外にある地域の収容所に後送しなければならない。②負傷又は病気 のため、後送すれば現在地にとどめるよりも大きな危険にさらすこととなる捕虜に限り、これを一時的に危険地帯にとどめることができる。

 捕虜は、戦闘地域から後送するまでの間に、不必要に危険にさらしてはならない。

第二十条〔後送の条件〕

 捕虜の後送は、常に、人道的に、且つ、抑留国の軍隊の移駐の場合に適用される条件と同様の条件で行わなければならない。

 抑留国は、後送中の捕虜に対し、食糧及び飲料水を充分に供給し、且つ、必要な被服及び医療上の手当を与えなければならない。抑留国は、捕虜の後 送中その安全を確保するために適当なすべての予防措置を執り、且つ、後送される捕虜の名簿をできる限りすみやかに作成しなければならない。
 捕虜が後送中に通過収容所を経由しなければならない場合には、その収容所における捕虜の滞在は、できる限り短期間のものとしなければならない。

第二部 捕虜の抑留

第一章 総則

第二十一条〔移動の自由の制限〕

 抑留国は、捕虜を抑留して置くことができる。抑留国は、捕虜に対し、抑留されている収容所から一定の限界をこえて離れない義務又は、その収容所に さくをめぐらしてある場合には、そのさくの外に出ない義務を課することができる。刑罰及び懲戒罰に関するこの条約の規定を留保し、捕虜は、衛生上の保護の ために必要な場合を除く外、拘禁してはならない。この拘禁は、その時の状況により必要とされる期間をこえてはならない。

 捕虜は、その属する国の法令により許される限り、宣誓又は約束に基いて不完全又は完全に解放することができる。この措置は、特に、捕虜の健康状態を改善するために役立つ場合に執るものとする。捕虜に対しては、宣誓又は約束に基く解放を受諾することを強制してはならない。
 各紛争当事国は、敵対行為が始まったときは、自国民が宣誓又は約束に基いて解放されることを受諾することを許可し、又は禁止する法令を敵国に通 告しなければならない。こうして通告された法令に従って宣誓又は約束をした捕虜は、その個人的名誉に基いて、その者が属する国及びその者を捕虜とした国に 対して宣誓及び約束に係る約定を果す義務を負う。この場合には、その者が属する国は、宣誓又は約束に反する役務をその者に要求し、また、その者から受けて はならない。

第二十二条〔抑留場所及び抑留条件〕

 捕虜は、衛生上及び保健上のすべての保障を与える地上の建物にのみ抑留することができる。捕虜は、捕虜自身の利益になると認められる特別の場合を除く外、懲治所に抑留してはならない。

 不健康な地域又は気候が捕虜にとって有害である地域に抑留されている捕虜は、できる限りすみやかに一層気候の良い地域に移さなければならない。
 抑留国は、捕虜の国籍、言語及び習慣に応じて、捕虜を二以上の収容所又は収容所内の区画に分類収容しなければならない。但し、捕虜が同意しない限り、その者が捕虜となった時に勤務していた軍隊に属する捕虜と分離してはならない。

第二十三条〔捕虜の安全〕

 捕虜は、いかなる場合にも戦闘地域の砲火にさらされる虞のある地域に送り、又は抑留してはならず、捕虜の所在は、特定の地点又は区域が軍事行動の対象とならないようにするために利用してはならない。

 捕虜は、現地の住民と同じ程度に空襲その他の戦争の危険に対する避難所を利用する権利を有する。捕虜は、前記の危険からその営舎を防護する作業 に従事する者を除く外、警報があった後できる限りすみやかに避難所に入ることができる。住民のために執るその他の防護措置は、捕虜にも適用しなければなら ない。
 抑留国は、利益保護国の仲介により、関係国に対し、捕虜収容所の地理的位置に関するすべての有益な情報を提供しなければならない。
 捕虜収容所は、軍事上許される場合にはいつでも、昼間は、空中から明白に識別することができるPW又はPGという文字によって表示しなければな らない。但し、関係国は、その他の表示の方法についても合意することができる。それらの表示は、捕虜収容所のみに使用するものとする。

第二十四条〔常設通過収容所〕

 通過又は審査のための常設的性質を有する収容所には、この部に定める条件と同様の条件で設備を施さなければならず、それらの収容所にある捕虜は、他の収容所にある場合と同一の待遇を受けるものとする。

第二章 捕虜の営舎、食糧及び被服

第二十五条〔営舎〕

 捕虜の宿営条件は、同一の地域に宿営する抑留国の軍隊についての宿営条件と同様に良好なものでなければならない。この条件は、捕虜の風俗及び習慣を考慮に入れたものでなければならず、いかなる場合にも、捕虜の健康に有害なものであってはならない。

 前項の規定は、特に捕虜の寝室に対し、その総面積及び最少限度の空間並びに一般的設備、寝具及び毛布について適用があるものとする。
 捕虜の個人的又は集団的使用に供する建物は、完全に湿気を防止し、並びに充分に保温し、及び点燈しなければならない。特に、日没から消燈時までの間は、点燈しなければならない。火災の危険に対しては、万全の予防措置を執らなければならない。
 女子の捕虜が男子の捕虜とともに宿泊する収容所においては、女子のために分離した寝室を設けなければならない。

第二十六条〔食糧〕

 毎日の食糧の基準配給の量、質及び種類は、捕虜を良好な健康状態に維持し、且つ、体重の減少又は栄養不良を防止するのに充分なものでなければならない。捕虜の食習慣も、また、考慮に入れなければならない。

 抑留国は、労働する捕虜に対し、その者が従事する労働に必要な食糧の増配をしなければならない。
 捕虜に対しては、飲料水を充分に供給しなければならない。喫煙は、許さなければならない。
 捕虜は、できる限り、その食事の調理に参加させなければならない。このため、捕虜は、炊事場で使用することができる。捕虜に対しては、また、その所持する別の食糧を自ら調理する手段を与えなければならない。
 捕虜に食堂として使用させるため、適当な場所を提供しなければならない。
 食糧に影響を及ぼす集団的の懲戒は、禁止する。

第二十七条〔被服〕

 抑留国は、捕虜が抑留されている地城の気候に考慮を払い、捕虜に被服、下着及びはき物を充分に供給しなければならない。抑留国が獲得した敵の軍隊の制服は、気候に適する場合には、捕虜の被服としてその用に供しなければならない。

 抑留国は、前記の物品の交換及び修繕を規則的に行わなければならない。更に労働する捕虜に対しては、労働の性質上必要な場合には、適当な被服を支給しなければならない。

第二十八条〔酒保〕

 すべての収容所には、捕虜が食糧、石けん及びたばこ並びに通常の日用品を買うことができる酒保を設備しなければならない。それらの価額は、現地の市場価額をこえるものであってはならない。

 収容所の酒保が得た益金は、捕虜のために用いなければならない。このため、特別の基金を設けなければならない。捕虜代表は、酒保及びその基金の運営に協力する権利を有する。
 収容所が閉鎖された場合には、前記の特別の基金の残額は、その基金を積み立てた捕虜と同一の国籍を有する捕虜のために用いられるように、人道的 な国際機関に引き渡さなければならない。全般的の送還の場合には、関係国間に反対の協定がない限り、前記の益金は、抑留国に残されるものとする。

第三章 衛生及び医療

第二十九条〔衛生〕

 抑留国は、収容所の清潔及び衛生の確保並びに伝染病の防止のために必要なすべての衛生上の措置を執らなければならない。

 捕虜に対しては、日夜、衛生上の原則に合致する設備で常に清潔な状態に維持されるものをその用に供しなければならない。女子の捕虜が宿営している収容所においては、女子のために分離した設備を設けなければならない。
 また、捕虜に対しては、収容所に設備することを必要とする浴場及びシャワーの外、身体の清潔及び被服の洗たくのために水及び石けんを充分に供給しなければならない。このため、捕虜に対しては、必要な設備、便益及び時間を与えなければならない。

第三十条〔治療〕

 各収容所には、捕虜がその必要とする治療及び適当な食事を受けることができる適当な病舎を備えなければならない。必要がある場合には、伝染病及び精神病にかかった患者のために隔離室を設けなければならない。

 重病の捕虜又は特別の治療、外科手術若しくは入院を必要とする状態にある捕虜は、その送還が近い将来に予定されている場合にも、適当な処置をす る能力がある軍又は軍以外の医療施設に収容しなければならない。身体障害者、特に、盲者に与えるべき救護及びその更生については、その者の送還までの間、 特別の便益を与えなければならない。
 捕虜は、なるべくその属する国の衛生要員、できれば自己と同一の国籍を有する衛生要員によって治療を受けるものとする。
 捕虜に対しては、診察を受けるために医療当局に出頭することを妨げてはならない。抑留国の当局は、要請があったときは、治療を受けた各捕虜に対 し、その病気又は負傷の性質並びに治療の期間及び種類を記載した公の証明書を発給しなければならない。その証明書の写一通は、中央捕虜情報局に送付しなけ ればならない。
 治療の費用(捕虜を良好な健康状態に保つために必要なすべての器具、特に、義歯その他の補装具及びめがねの費用を含むJは、抑留国が負担しなければならない。

第三十一条〔身体検査〕

 捕虜の身体検査は、少くとも月に一回行わなければならない。その検査は、各捕虜の体重の測定及び記録を含むものでなければならない。その検査は、 特に、捕虜の健康、栄養及び清潔状態の一般的状態を監視し、並びに伝染病、特に結核、マラリヤ及び性病を検出することを目的としなければならない。このた め、結核の早期検出のためのエックス線による集団的小型写真の定期的撮影等利用可能な最も有効な方法を用いなければならない。

第三十二条〔医療上の業務に従事する捕虜〕

 抑留国は、軍隊の衛生機関に属さない捕虜で医師、歯科医師、看護婦又は看護員であるものに対し、同一の国に属する捕虜のために医療上の業務に従事 することを要求することができる。この場合には、その者は、引き続き捕虜とされるが、抑留国が抑留する同階級の衛生要員の待遇に相当する待遇を受けるもの とする。その者は、第四十九条に基く他の労働を免除される。

第四章 捕虜を援助するため抑留される衛生要員及び宗教要員

第三十三条〔要員の権利及び特権〕

 抑留国が捕虜を援助するため抑留する衛生要員及び宗教要員は、捕虜と認めてはならない。但し、それらの要員は、少くともこの条約の利益及び保護を受けるものとし、また、捕虜に対して医療上の看護及び宗教上の役務を提供するため必要なすべての便益を与えられるものとする。

 それらの要員は、抑留国の軍法の範囲内で、抑留国の権限のある機関の管理の下に、職業的良心に従って、捕虜、特に自己 が属する軍隊に属する捕虜の利益のために医療又は宗教に関する任務を引き続き遂行しなければならない。それらの要員は、また、医療上又は宗教上の任務を遂 行するため、次の便益を与えられるものとする。

(a)  それらの要員は、収容所外にある労働分遣所又は病院にいる捕虜を定期的に訪問することを許される。このため、抑留国は、それらの要員に対し、必要な輸送手段を自由に使用させなければならない。

(b)  各収容所の先任軍医たる衛生要員は、抑留されている衛生要員の活動に関連するすべての事項について、収容所の軍当局に対して責任を負う。このた め、紛争当事国は、敵対行為の開始の際、衛生要員(戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約第二十六 条に掲げる団体の衛生要員を含む。)の相互に相当する階級に関して合意しなければならない。この先任軍医及び宗教要員は、その任務に関するすべての事項に ついて、収容所の権限のある当局と直接に交渉する権利を有する。その当局は、それらの者に対し、それらの事項に関する通信のため必要なすべての便益を与え なければならない。

(c)  それらの要員は、抑留されている収容所の内部の紀律に従わなければならないが、その医療上又は宗教上の任務に関係がない労働を強制されないものとする。
 紛争当事国は、敵対行為の継続中に、前記の抑留された要員について行うことがある交替に関して合意し、及びその手続を定めなければならない。
 前記の規定は、捕虜に関する医療又は宗教の分野における抑留国の義務を免除するものではない。

第五章 宗教的、知的及び肉体的活動

第三十四条〔宗教上の義務〕

 捕虜は、軍当局が定める日常の紀律に従うことを条件として、自己の宗教上の義務の履行(自己の宗教の儀式に出席することを含む。)について完全な自由を享有する。

 捕虜に対しては、宗教的儀式を行う適当な場所を提供しなければならない。

第三十五条〔留置される宗教要員〕

 敵の権力内に陥った宗教要員で、捕虜を援助するために残留し、又は抑留されているものは、その宗教的良心に従って捕虜に対して宗教上の任務を行う こと及び同一の宗教に属する捕虜に対して自由に自己の聖職を行うことを許さなければならない。それらの要員は、同一の軍隊に属し、同一の言語を話し、又は 同一の宗教に属する捕虜がいる各種の収容所及び労働分遣所に配属しなければならない。それらの要員は、所属する収容所外にある捕虜を訪問するため必要な便 益(第三十三条に規定する輸送手段を含む。)を享有する。それらの要員は、検閲を受けることを条件として、その宗教上の任務に関する事項について抑留国の 宗教機関及び国際的宗教団体と通信する自由を有する。それらの要員がこのために発送する手紙及び葉書は、第七十一条に規定する割当外のものとする。

第三十六条〔聖職者たる捕虜〕

 聖職者たる捕虜でその属する軍隊の宗教要員となっていないものは、宗派のいかんを問わず、同一の宗派に属する者に対して自由に宗教上の任務を行う ことを許される。このため、その者は、抑留国が抑留する宗教要員と同様の待遇を受けるものとする。その者は、他のいかなる労働も強制されないものとする。

第三十七条〔自己の宗教の聖職者を持たない捕虜〕

 捕虜が、抑留された宗教要員又は自己の宗派に属する聖職者たる捕虜の援助を受けない場合には、その捕虜の宗派その他これに類する宗派に属する聖職 者又は、その聖職者がないときは、宗教的見地から可能であれば資格がある非聖職者が、当該捕虜の要請に応じて援助の任務を果すために指名されなければなら ない。この指名は、抑留国の承認を条件として、当該捕虜及び、必要があるときは、同一の宗教の現地の宗教機関の同意を得て行わなければならない。こうして 指名された者は、抑留国が紀律及び軍事上の安全のために設ける規制に服さなければならない。

第三十八条〔娯楽、研究、運動競技〕

 抑留国は、各捕虜の個人的趣味を尊重して、捕虜の知的、教育的及び娯楽的活動並びに運動競技を奨励しなければならない。抑留国は、捕虜に適当な場所及び必要な設備を提供して、捕虜がそれらの活動をするため必要な措置を執らなければならない。

 捕虜に対しては、身体の運動(運動競技を含む。)をする機会及び戸外にいる機会を与えなければならない。このため、すべての収容所で充分な空地を提供しなければならない。

第六章 紀律

第三十九条〔管理、敬礼〕

 各捕虜収容所は、抑留国の正規の軍隊に属する責任のある将校の直接の指揮下に置かなければならない。その将校は、この条約の謄本を所持し、収容所 職員及び警備員がこの条約の規定を確実に知っているようにし、並びに自国の政府の指示の下でこの条約の適用について責任を負わなければならない。

 捕虜(将校を除く。)は、抑留国のすべての将校に対し、敬礼をし、及び自国の軍隊で適用する規則に定める敬意の表示をしなければならない。
 将校たる捕虜は、抑留国の上級の将校に対してのみ敬礼をするものとする。但し、収容所長に対しては、その階級のいかんを問わず、敬礼をしなければならない。

第四十条〔記章及び勲章〕

 階級及び国籍を示す記章並びに勲章の着用は、許さなければならない。

第四十一条〔条約、矯則の掲示〕

 各収容所には、この条約及びその附属書の本文並びに第六条に規定するすべての特別協定の内容を、捕虜の用いる言語により、すべての捕虜が読むこと ができる場所に掲示して置かなければならない。この掲示の写は、掲示に接する機会がない捕虜に対しては、その請求があったときに与えなければならない。

 捕虜の行動に関する各種の規則、命令、通告及び公示は、捕虜が理解する言語によって伝えなければならない。それらの規則、命令、通告及び公示 は、前項に定める方法で掲示しなければならず、その写は、捕虜代表に交付しなければならない。捕虜に対して個人的に発する命令及び指令も、当該捕虜が理解 する言語によらなければならない。

第四十二条〔武器の使用〕

 捕虜、特に、逃走し、又は逃走を企てる捕虜に対する武器の使用は、最後の手段とし、それに先だって時宜に適した警告を必ず与えなければならない。

第七章 捕虜の階級

第四十三条〔階級の通知〕

 紛争当事国は、敵対行為の開始の際、同等の階級に属する捕虜の間における待遇の平等を確保するため、この条約の第四条に掲げるすべての者の組織上の名称及び階級を相互に通知しなければならない。その後に設けた組織上の名称及び階級も、同様に通知しなければならない。

 抑留国は、捕虜が属する国によって正規に通告された捕虜の階級の昇進を承認しなければならない。

第四十四条〔将校の待遇〕

 将校たる捕虜及び将校に相当する地位の捕虜は、その階級及び年令に適当な考慮を払って待遇しなければならない。

 将校収容所における役務を確保するため、同一軍隊の兵たる捕虜でできる限り同一の言語を話すものが、将校たる捕虜及び将校に相当する地位の捕虜 の階級を考慮して、充分な人数だけ同収容所に派遣されなければならない。それらの兵に対しては、他のいかなる労働も要求してはならない。
 将校自身による食事の管理に対しては、すべての方法で便益を与えなければならない。

第四十五条〔その他の捕虜の待遇〕

 将校たる捕虜及び将校に相当する地位の捕虜以外の捕虜は、その階級及び年令に適当な考慮を払って待遇しなければならない。

 それらの捕虜自身による食事の管理に対しては、すべての方法で便益を与えなければならない。

第八章 収容所に到着した後の捕虜の移動

第四十六条〔条件〕

 抑留国は、捕虜の移動を決定するに当っては、捕虜自身の利益について、特に、捕虜の送還を一層困難にしないことについて考慮しなければならない。

 捕虜の移動は、常に、人道的に、且つ、抑留国の軍隊の移動の条件よりも不利でない条件で行わなければならない。捕虜の移動については、常に、捕虜が慣れている気候条件を考慮しなければならず、移動の条件は、いかなる場合にも、捕虜の健康を害するものであってはならない。
 抑留国は、移動中の捕虜に対し、その健康を維持するために充分な食糧及び飲料水並びに必要な被服、宿舎及び医療上の手当を供与しなければならな い。抑留国は、特に、海上又は空中の輸送の場合には、移動中の捕虜の安全を確保するため、適当な予防措置を執らなければならない。抑留国は、移動される捕 虜の完全な名簿をその出発前に作成しなければならない。

第四十七条〔移動してはならない場合〕

 傷者又は病者たる捕虜は、移動によって回復を妨げられる虞がある間は、移動してはならない。但し、それらの者の安全のために絶対に移動を必要とする場合は、この限りでない。

 戦線が収容所に接近した場合には、その収容所の捕虜は、移動を充分に安全な条件で行うことができるとき、又は捕虜を現地にとどめれば移動した場合におけるよりも一層大きな危険にさらすこととなるときを除く外、移動してはならない。

第四十八条〔移動のための手続〕

 移動の場合には、捕虜に対し、その出発及び新たな郵便用あて名について正式に通知しなければならない。その通知は、捕虜がその荷物を準備し、及びその家族に通報することができるように、充分に早く与えなければならない。

 捕虜に対しては、その個人用品並びに受領した通信及び小包を携帯することを許さなければならない。それらの物品の重量は、移動の条件により必要 とされるときは、各捕虜が運ぶことができる適当な重量に制限することができる。その重量は、いかなる場合にも、捕虜一人について二十五キログラムをこえて はならない。
 旧収容所にあてられた通信及び小包は、遅滞なく捕虜に転送しなければならない。収容所長は、捕虜代表と協議して、捕虜の共有物及び本条第二項に基いて課せられる制限により捕虜が携帯することができない荷物の輸送を確保するため必要な措置を執らなければならない。
 移動の費用は、抑留国が負担しなければならない。

第三部 捕虜の労働

第四十九条〔一般的観察〕

 抑留国は、特に捕虜の身体的及び精神的健康状態を良好にして置くため、捕虜の年令、性別、階級及び身体的適性を考慮して、健康な捕虜を労働者として使用することができる。

 下士官たる捕虜に対しては、監督者としての労働のみを要求することができる。その要求を受けなかった下士官たる捕虜は、自己に適する他の労働を求めることができる。この労働は、できる限り、それらの者に与えなければならない。
 将校又はこれに相当する地位の者が自己に適する労働を求めたときは、その労働は、できる限り、それらの者に与えなければならない。但し、それらの者に対しては、いかなる場合にも、労働を強制してはならない。

第五十条〔承認された労働〕

 捕虜に対しては、収容所の管理、営繕又は維持に関連する労働の外、次の種類に含まれる労働に限り、これに従事することを強制することができる。


(a)  農業

(b)  原料の生産又は採取に関連する産業、製造工業(や金業、機械工業及び化学工業を除く。)並びに軍事的性質又は軍事的目的を有しない土木業及び建築業

(c)  軍事的性質又は軍事的目的を有しない運送業及び倉庫業

(d)  商業並びに芸術及び工芸

(e)  家内労働

(f)  軍事的性質又は軍事的目的を有しない公益事業
 前項の規定に対する違反があった場合には、捕虜は、第七十八条に従って、苦情を申し立てる権利を行使することができる。

第五十一条〔労働条件〕

 捕虜に対しては、特に宿営、食糧、被服及び器具に関し、適当な労働条件を与えなければならない。その条件は、類似の労働に従事する抑留国の国民が享有する条件よりも低い条件であってはならない。また、気候条件も、考慮しなければならない。

 抑留国は、捕虜を労働者として使用するに当っては、捕虜が労働する地域において、労働の保護に関する国内法令、特に労働者の安全に関する法令を正当に適用することを確保しなければならない。
 捕虜に対しては、作業訓練をしなければならず、また、捕虜が従事すべき労働に適した保護のための用具で抑留国の国民に与える保護のための用具と 同様のものを与えなければならない。第五十二条の規定を留保して、文民たる労働者が負担する通常の危険は、捕虜にも負担させることができる。
 労働条件は、いかなる場合にも、懲戒の方法によって一層苦しいものとしてはならない。

第五十二条〔危険又は不健康な労働〕

 捕虜は、自ら希望しない限り、不健康又は危険な労働に使用してはならない。

 捕虜は、抑留国の軍隊の構成員にとっても屈辱的であると認められる労働には使用してはならない。
 機雷、地雷その他これらに類する機器の除去は、危険な労働と認める。

第五十三条〔労働時間〕

 捕虜の毎日の労働時間(往復に要する時間を含む。)は、過度であってはならず、いかなる場合にも、抑留国の国民で同一の労働に使用される当該地方の文民たる労働者について許される労働時間をこえてはならない。

 捕虜に対しては、毎日の労働の中間において少くとも一時間の休憩時間を与えなければならない。この休憩時間は、抑留国の労働者が一層長い休憩時 間を与えられる場合には、その休憩時間と同一のものとする。この休憩時間の外、なるべく日曜日又は出身国における休日に、一週間について連続二十四時間の 休暇を与えなければならない。更に、一年間労働に従事した捕虜に対しては、連続八日間の有給休暇を与えなければならない。
 出来高払の労働のような労働の方法が採用されるときは、それによって労働時間を過度にすることがあってはならない。

第五十四条〔労働賃金〕

 捕虜に支払うべき労働賃金は、この条約の第六十二条の規定に従って定める。

 労働災害を被った捕虜又は労働の際若しくは労働の結果疾病にかかった捕虜に対しては、その者の状態により必要とされるすべての看護を施さなけれ ばならない。更に、抑留国は、当該捕虜に対し、その者が属する国に請求をすることができるように診断書を発給し、また、その診断書の写一通を第百二十三条 に定める中央捕虜情報局に送付しなければならない。

第五十五条〔身体検査〕

 捕虜の労働上の適性は、少くとも毎月一回、身体検査によって定期的に確かめなければならない。その検査においては、捕虜に対して要求する労働の性質を特に考慮しなければならない。

 捕虜は、労働することができないと自ら認めたときは、その収容所の医療当局する捕虜の間における待遇の平等を確保するため、この条約の第四条に 掲げるすべての者の組織上の名称及び階級を相互に通知しなければならない。その後に設けた組織上の名称及び階級も、同様に通知しなければならない。

第五十六条〔労働分遣所〕

 労働分遣所の組織及び管理は、捕虜収容所の組織及び管理と同様のものでなければならない。

 各労働分遣所は、捕虜収容所の一の監督の下に置かれ、管理上その一部とされる。当該収容所の軍当局及び所長は、自国の政府の指示の下で、当該労働分遣所におけるこの条約の規定の遵守について責任を負う。
 収容所長は、その収容所に所属する労働分遣所の最新の記録を保管し、また、その収容所を訪問することがある利益保護国、赤十字国際委員会又は捕虜に援助を与えるその他の団体の代表に対してその記録を送付しなければならない。

第五十七条〔私人のために労働する捕虜〕

 私人のために労働する捕虜の待遇は、その私人がその捕虜の監視及び保護について責任を負う場合にも、この条約で定める待遇よりも不利な待遇であっ てはならない。抑留国並びにその捕虜が属する収容所の軍当局及び所長は、その捕虜の給養、看護、待遇及び労働賃金の支払について完全な責任を負う。

 その捕虜は、その従属する収容所の捕虜代表と連絡を保つ権利を有する。

第四部 捕虜の金銭収入

第五十八条〔現金〕

 敵対行為が始まったときは、抑留国は、利益保護国と取極をするまでの間、現金又はそれに類する形式で捕虜が所持することができる最高限度の額を定 めることができる。捕虜の正当な所有に属するこれをこえる額で、取り上げられ、又は留置されたものは、捕虜が預託した金銭とともに捕虜の勘定に入れなけれ ばならず、また、捕虜の同意を得ないで他の通貨に両替してはならない。

 捕虜が収容所外で役務又は物品を購入して現金を支払うことを許される場合には、その支払は、捕虜自身又は収容所の当局が行うものとし、当該捕虜の勘定に借記するものとする。抑留国は、これに関して必要な規則を定めるものとする。

第五十九条〔捕虜から取り上げた現金〕

 捕虜となった時に捕虜から第十八条に従って取り上げた抑留国の通貨たる現金は、この部の第六十四条の規定に従って各捕虜の勘定に貸記しなければならない。

 捕虜となった時に捕虜から取り上げたその他の通貨を抑留国の通貨に両替した時も、各捕虜の勘定に貸記しなければならない。

第六十条〔俸給の前払〕

 抑留国は、すべての捕虜に対し、毎月俸給を前払しなければならない。その額は、次の額を抑留国の通貨に換算した額とする。


第一類  軍曹より下の階級の捕虜 八スイス・フラン

第二類  軍曹その他の下士官又はこれに相当する階級の捕虜 十二スイス・フラン

第三類  准士官及び少佐より下の階級の将校又はこれらに相当する階級の捕虜 五十スイス・フラン

第四類  少佐、中佐及び大佐又はこれらに相当する階級の捕虜 六十スイス・フラン

第五類  将官又はこれに相当する階級の捕虜 七十五スイス・フラン
 もっとも、関係紛争当事国は、特別協定によって、前記の各類の捕虜に対して支払うべき前払の額を改訂することができる。
 また、前記の第一項に定める額が、抑留国の軍隊の俸給に比べて不当に高額である場合又は何らかの理由により抑留国に重大な支障を与える場合には、抑留国は、前記の支払額の改訂のために捕虜が属する国と特別協定を締結するまでの間、

(a)  前記の第一項に定める額を引き続き捕虜の勘定に貸記しなければならず、

(b)  前払の俸給中捕虜の使用に供する額を合理的な額に臨時に制限することができる。但し、その額は、第一類に関しては、抑留国が自国の軍隊の構成員に支給する額よりも低額であってはならない。
 前記の制限の理由は、遅滞なく利益保護国に通知するものとする。

第六十一条〔追加給与〕

 抑留国は、捕虜が属する国が捕虜に送付する額を捕虜に対する迫加給与として分配することを受諾しなければならない。但し、分配される額が、同一の 類の各捕虜について同額であり、当該国に属する同一の類のすベての捕虜に分配され、且つ、できる限りすみやかに第六十四条の規定に従って各捕虜の勘定に貸 記される場合に限る。その追加給与は、抑留国に対し、この条約に基く義務を免除するものではない。

第六十二条〔労働賃金〕

 捕虜に対しては、抑留当局が直接に公正な労働賃金を支払わなければならない。その賃金は、抑留当局が定めるが、いかなる場合にも、一労働日に対し 四分の一スイス・フラン未満であってはならない。抑留国は、自国が定めた日給の額を捕虜及び、利益保護国の仲介によって、捕虜が属する国に通知しなければ ならない。

 労働賃金は、収容所の管理、営繕又は維持に関連する任務又は熟練労働若しくは半熟練労働を恒常的に割り当てられている捕虜及び捕虜のための宗教上又は医療上の任務の遂行を要求される捕虜に対し、抑留当局が、同様に支払わなければならない。
 捕虜代表並びにその顧問及び補助者の労働賃金は、酒保の利益で維持する基金から支払わなければならない。その賃金の額は、捕虜代表が定め、且 つ、収容所長の承認を得なければならない。前記の基金がない場合には、抑留当局は、これらの捕虜に公正な労働賃金を支払わなければならない。

第六十三条〔賃金の移送〕

 捕虜に対しては、個人的又は集団的に当該捕虜にあてて送付された金銭を受領することを許さなければならない。

 各捕虜は、抑留国が定める範囲内において、次条に規定する自己の勘定の貸方残高を処分することができるものとし、抑留国は、要請があった支払を しなければならない。捕虜は、また、抑留国が肝要と認める財政上又は通貨上の制限に従うことを条件として、外国へ向けた支払をすることができる。この場合 には、抑留国は、捕虜が被扶養者にあてる支払に対して優先権を与えなければならない。
 捕虜は、いかなる場合にも、その属する国の同意があったときは、次のようにして自国へ向けた支払をすることができる。すなわち、抑留国は、捕虜 が属する国に対し、利益保護国を通じ、捕虜、受領者及び抑留国の通貨で表示した支払額に関するすべての必要な細目を記載した通告書を送付する。この通告書 には、当該捕虜が署名し、且つ、収容所長が副署する抑留国は、前記の額を捕虜の勘定に借記し、こうして借記された額は、抑留国が、捕虜が属する国の勘定に 貸記する。
 抑留国は、前記の規定を適用するため、この条約の第五附属書に掲げるひな型規則を有効に利用することができる。

第六十四条〔捕虜の勘定〕

 抑留国は、各捕虜について、少くとも次の事項を示す勘定を設けなければならない。

(1)  捕虜に支払うべき額、捕虜が俸給の前払若しくは労働賃金として得た額又はその他の源泉から得た額、捕虜から取り上げた抑留国の通貨の額及び捕虜から取り上げた金銭でその要請によって抑留国の通貨に両替したものの額
(2)  現金その他これに類する形式で捕虜に支払われた額、捕虜のためにその要請によって支払われた額及び前条第三項に基いて振り替えられた額

第六十五条〔勘定の管理〕

 捕虜の勘定に記入された各事項については、当該捕虜又はその代理をする捕虜代表が、副署又はかしら字署名をしなければならない。

 捕虜に対しては、いつでも、その勘定を閲覧し、及びその写を入手する適当な便益を与えなければならない。その勘定は、利益保護国の代表者が、収容所を訪問した際検査をすることができる。
 捕虜を一収容所から他の収容所に移動する場合には、その捕虜の勘定は、その捕虜とともに移転するものとする。捕虜を一抑留国から他の抑留国に移 送する場合には、その捕虜の財産たる金銭で前抑留国の通貨でないものは、その捕虜とともに移転するものとする。その捕虜に対しては、その勘定に貸記されて いる他のすべての金銭の額について証明を発給しなければならない。
 関係紛争当事国は、利益保護国を通じて定期的に捕虜の勘定の額を相互に通告するため、協定することができる。

第六十六条〔勘定の清算〕

 捕虜たる身分が解放又は送還によって終了したときは、抑留国は、捕虜たる身分が終了した時における捕虜の貸方残高を示す証明書で抑留国の権限のあ る将校が署名したものを捕虜に交付しなければならない。抑留国は、また、捕虜が属する国に対し、利益保護国を通じ、送還、解放、逃走、死亡その他の事由で 捕虜たる身分が終了したすべての捕虜に関するすべての適当な細目及びそれらの捕虜の貸方残高を示す表を送付しなければならない。その表は、一枚ごとに抑留 国の権限のある代表者が証明しなければならない。

 本条の前記の規定は、紛争当事国間の相互の協定で変更することができる。
 捕虜が属する国は、捕虜たる身分が終了した時に抑留国から捕虜に支払うべき貸方残高を当該捕虜に対して決済する責任を負う。

第六十七条〔紛争当事国間の清算〕

 第六十条に従って捕虜に支給される俸給の前払は、捕虜が属する国に代ってされる前払と認める。その俸給の前払並びに第六十三条第三項及び第六十八条に基いて当該国が行ったすべての支払は、敵対行為の終了の際、関係国の間の取極の対象としなければならない。

第六十八条〔補償の請求〕

 労働による負傷又はその他の身体障害に関する捕虜の補償の請求は、利益保護国を通じ、捕虜が属する国に対してしなければならない。抑留国は、第五 十四条に従って、いかなる場合にも、負傷又は身体障害について、その性質、それが生じた事情及びそれに与えた医療上の又は病院における処置に関する細目を 示す証明書を当該捕虜に交付するものとする。この証明書には、抑留国の責任のある将校が署名し、医療の細目は、軍医が証明するものとする。

 第十八条に基いて抑留国が取り上げた個人用品、金銭及び有価物で送還の際返還されなかったもの並びに捕虜が被った損害で抑留国又はその機関の責 に帰すベき事由によると認められるものに関する捕虜の補償の請求も、捕虜が属する国に対してしなければならない。但し、前記の個人用品で捕虜が捕虜たる身 分にある間その使用を必要とするものについては、抑留国がその費用で現物補償しなければならない。抑留国は、いかなる場合にも、前記の個人用品、金銭又は 有価物が捕虜に返還されなかつた理由に関する入手可能なすべての情報を示す証明書で責任のある将校が署名したものを捕虜に交付するものとする。この証明書 の写一通は、第百二十三条に定める中央捕虜情報局を通じ、捕虜が属する国に送付するものとする。

第五部 捕虜と外部との関係

第六十九条〔措置の通知〕

 抑留国は、捕虜がその権力内に陥ったときは、直ちに、捕虜及び、利益保護国を通じ、捕虜が属する国に対し、この部の規定を実施するために執る措置 を通知しなければならない。抑留国は、その措置が後に変更されたときは、その変更についても同様に前記の関係者に通知しなければならない。第七十条〔捕虜 通知票〕各捕虜に対しては、その者が、捕虜となった時直ちに、又は収容所(通過収容所を含む。)に到着した後一週間以内に、また、病気になった場合又は病 院若しくは他の収容所に移動された場合にもその後一週間以内に、その家族及び第百二十三条に定める中央捕虜情報局に対し、捕虜となった事実、あて名及び健 康状態を通知する通知票を直接に送付することができるようにしなければならない。その通知票は、なるべくこの条約の附属のひな型と同様の形式のものでなけ ればならない。その通知票は、できる限りすみやかに送付するものとし、いかなる場合にも、遅延することがあってはならない。

第七十一条〔通信〕

 捕虜に対しては、手紙及び葉書を送付し、及び受領することを許さなければならない。抑留国が各捕虜の発送する手紙及び葉書の数を制限することを必 要と認めた場合には、その数は、毎月、手紙二通及び葉書(第七十条に定める通知票を除く。)四通より少いものであってはならない。それらの手紙及び葉書 は、できる限りこの条約の附属のひな型と同様の形式のものでなければならない。その他の制限は、抑留国が必要な検閲の実施上有能な翻訳者を充分に得ること ができないために翻訳に困難をきたし、従って、当該制限を課することが捕虜の利益であると利益保護国が認める場合に限り、課することができる。捕虜にあて た通信が制限されなければならない場合には、その制限は、通常抑留国の要請に基いて、捕虜が属する国のみが命ずることができる。前記の手紙及び葉書は、抑 留国が用いることができる最もすみやかな方法で送付するものとし、懲戒の理由で、遅延させ、又は留置してはならない。

 長期にわたり家族から消息を得ない捕虜又は家族との間で通常の郵便路線により相互に消息を伝えることができない捕虜及び家族から著しく遠い場所 にいる捕虜に対しては、電報を発信することを許さなければならない。その料金は、抑留国における捕虜の勘定に借記し、又は捕虜が処分することができる通貨 で支払うものとする。捕虜は、緊急の場合にも、この措置による利益を受けるものとする。
 捕虜の通信には、原則として、母国語で書かなければならない。紛争当事国は、その他の言語で通信することを許すことができる。
 捕虜の郵便を入れる郵袋は、確実に封印し、且つ、その内容を明示する札を附した上で、名あて郵便局に送付しなければならない。

第七十二条〔救済品の一般原則〕

 捕虜に対しては、特に、食糧、被服、医療品及び捕虜の必要を満たす宗教、教育又は娯楽用物品(図書、宗教用品、科学用品、試験用紙、楽器、運動具 及び捕虜がその研究又は文化活動をすることを可能にする用品を含む。)を内容とする個人又は集団あての荷物を郵便その他の径路により受領することを許さな ければならない。

 それらの荷物は、抑留国に対し、この条約で抑留国に課せられる義務を免除するものではない。
 前記の荷物に対して課することができる唯一の制限は、利益保護国が捕虜自身の利益のために提案する制限又は赤十字国際委員会その他捕虜に援助を与える団体が運送上の異常な混雑を理由として当該団体自身の荷物に関してのみ提案する制限とする。
 個人又は集団あての荷物の発送に関する条件は、必要があるときは、関係国間の特別協定の対象としなければならない。関係国は、いかなる場合に も、捕虜による救済品の受領を遅延させてはならない。図書は、被服又は食糧の荷物の中に入れてはならない。医療品は、原則として、集団あての荷物として送 付しなければならない。

第七十三条〔集団あての救済品〕

 集団あての救済品の受領及び分配の条件に関して関係国間に特別協定がない場合には、この条約に附属する集団的救済に関する規則を適用しなければならない。

 前記の特別協定は、いかなる場合にも、捕虜代表が捕虜にあてられた集団的救済品を保有し、分配し、及び捕虜の利益となるように処分する権利を制限するものであってはならない。
 前記の特別協定は、また、利益保護国、赤十字国際委員会又は捕虜に援助を与えるその他の団体で集団あての荷物の伝達について責任を負うものの代表者が受取人に対する当該貨物の分配を監督する権利を制限するものであってはならない。

第七十四条〔課徴金、郵便料金の免除〕

 捕虜のためのすべての救済品は、輸入税、税関手数料その他の課徴金を免除される。

 捕虜にあてられ、又は捕虜が発送する通信、救済品及び認められた送金で郵便によるものは、直接に送付されると第百二十二条に定める捕虜情報局及 び第百二十三条に定める中央捕虜情報局を通じて送付されるとを問わず、差出国、名あて国及び仲介国において郵便料金を免除される。
 捕虜にあてられた救済品が重量その他の理由により郵便で送付することができない場合には、その輸送費は、抑留国の管理の下にあるすべての地域に おいては、抑留国が負担しなければならない。この条約のその他の締約国は、それぞれの領域における輸送費を負担しなければならない。
 関係国間に特別協定がない場合には、前記の救済品の輸送に関連する費用(前記により免除される費用を除く。)は、発送人が負担しなければならない。
 締約国は、捕虜が発信し、又は捕虜にあてられる電報の料金をできる限り低額にするように努めなければならない。

第七十五条〔特別の輸送手段〕

 軍事行動のため、関係国が第七十条、第七十一条、第七十二条及び第七十七条に定める送付品の輸送を確保する義務を遂行することができなかった場合 には、関係利益保護国、赤十字国際委員会又は紛争当事国が正当に承認したその他の団体は、適当な輸送手段(鉄道車両、自動車、船舶、航空機等)によりその 送付品を伝達することを確保するように企画することができる。このため、締約国は、それらのものに前記の輸送手段を提供することに努め、且つ、特に、必要 な安導券を与えて輸送手段の使用を許さなければならない。

 前記の輸送手段は、次のものの輸送のためにも使用することができる。

(a)  第百二十三条に定める中央捕虜情報局と第百二十二条に定める各国の捕虜情報局との間で交換される通信、名簿及び報告書

(b)  利益保護国、赤十字国際委員会又は捕虜に援助を与えるその他の団体がその代表又は紛争当事国との間で交換する捕虜に関する通信及び報告書
 前記の規定は、紛争当事国が希望した場合に他の輸送手段について取極をする権利を制限するものではなく、また、安導券が相互に同意された条件でその輸送手段に関して与えられることを排除するものでもない。
 特別協定がない場合には、輸送手段の使用に要する費用は、それによって利益を得る者の国籍が属する紛争当事国が、あん分して負担しなければならない。

第七十六条〔検閲及び検査〕

 捕虜にあてられ、又は捕虜が発送する通信の検閲は、できる限りすみやかに行わなければならない。その通信は、差出国及び名あて国のみがそれぞれ一回に限り検閲することができる。

 捕虜にあてられた荷物の検査は、その中の物品をそこなう虞のある条件の下で行ってはならない。その検査は、文書又は印刷物の場合を除く外、名あ て人又は名あて人が正当に委任した捕虜の立会の下に行わなければならない。捕虜に対する個人又は集団あての荷物の引渡は、検査の困難を理由として遅滞する ことがあってはならない。
 紛争当事国が命ずる通信の禁止は、軍事的理由によるものであると政治的理由によるものであるとを問わず、一時的のものでなければならず、その禁止の期間は、できる限り短いものでなければならない。

第七十七条〔法律文書〕

 抑留国は、捕虜にあてられ、又は捕虜が発送する証書、文書及び記録、特に、委任状及び遺言状が利益保護国又は第百二十三条に定める中央捕虜情報局を通じて伝達されるように、すべての便益を提供しなければならない。

 抑留国は、いかなる場合にも、前記の書類の作成について捕虜に便益を与えなければならない。特に、抑留国は、捕虜が法律家に依頼することを許さなければならず、また、捕虜の署名の認証のため必要な措置を執らなければならない。

第六部 捕虜と当局との関係

第一章 抑留条件に関する捕虜の苦情

第七十八条〔苦情及び要請〕

 捕虜は、自己を権力内に有する軍当局に対し、抑留条件に関する要請を申し立てる権利を有する。

 捕虜は、また、その抑留条件に関して苦情を申し立てようとする事項に対して利益保護国の代表者の注意を喚起するため、捕虜代表を通じ、又は必要と認めるときは直接に、利益保護国の代表者に対して申入れをする権利を無制限に有する。
 前記の要請及び苦情は、制限してはならず、また、第七十一条に定める通信の割当数の一部を構成するものと認めてはならない。この要請及び苦情は、直ちに伝達しなければならない。この要請及び苦情は、理由がないと認められた場合にも、処罰の理由としてはならない。
 捕虜代表は、利益保護国の代表者に対し、収容所の状態及び捕虜の要請に関する定期的報告をすることができる。

第二章 捕虜代表

第七十九条〔選挙〕

 捕虜は、捕虜が収容されているすべての場所(将校が収容されている場所を除く。)において、軍当局、利益保護国、赤十字国際委員会及び捕虜を援助 するその他の団体に対して捕虜を代表することを委任される捕虜代表を、六箇月ごとに及び欠員を生じたつど、自由に秘密投票で選挙しなければならない。この 捕虜代表は、再選されることができる。

 将校及びこれに相当する者の収容所又は混合収容所では、捕虜中の先任将校をその収容所の捕虜代表と認める。将校の収容所では、捕虜代表は、将校 により選ばれた一人又は二人以上の顧問によって補助されるものとする。混合収容所では、捕虜代表の補助者は、将校でない捕虜の中から選ばなければならず、 また、将校でない捕虜によって選挙されたものでなければならない。
 収容所の管理に関する任務で捕虜が責任を負うものを遂行するため、捕虜の労働収容所には、同一の国籍を有する捕虜たる将校を置かなければならな い。これらの将校は、本条第一項に基いて捕虜代表として選挙されることができる。この場合には、捕虜代表の補助者は、将校でない捕虜の中から選ばなければ ならない。
 選挙された捕虜代表は、すべて、その任務につく前に抑留国の承認を得なければならない。抑留国は、捕虜により選挙された捕虜代表について承認を拒否したときは、その拒否の理由を利益保護国に通知しなければならない。
 捕虜代表は、いかなる場合にも、自己が代表する捕虜と同一の国籍、言語及び慣習の者でなければならない。国籍、言語及び慣習に従って収容所の異なる区画に収容された捕虜は、こうして、前各項に従って各区画ごとにそれぞれの捕虜代表を有するものとする。

第八十条〔任務〕

 捕虜代表は、捕虜の肉体的、精神的及び知的福祉のために貢献しなければならない。

 特に、捕虜がその相互の間で相互扶助の制度を組織することに決定した場合には、この組織は、この条約の他の規定によって捕虜代表に委任される特別の任務とは別に、捕虜代表の権限に属するものとする。
 捕虜代表は、その任務のみを理由としては、捕虜が犯した罪について責任を負うものではない。

第八十一条〔特権〕

 捕虜代表に対しては、その任務の遂行が他の労働によって一層困難となるときは、他の労働を強制してはならない。

 捕虜代表は、その必要とする補助者を捕虜の中から指名することができる。捕虜代表に対しては、すべての物質的便益、特に、その任務の達成のために必要なある程度の行動の自由(労働分遣所の訪問、需品の受領等)を許さなければならない。
 捕虜代表に対しては、捕虜が抑留されている施設を訪問することを許さなければならない。各捕虜は、その捕虜代表と自由に協議する権利を有する。
 捕虜代表に対しては、また、抑留国の当局、利益保護国及び赤十字国際委員会並びにそれらの代表、混成医療委員会並びに捕虜を援助する団体と郵便 及び電信で通信するためのすべての便益を与えなければならない。労働分遣所の捕虜代表は、主たる収容所の捕虜代表と通信するため、同一の便益を享有する。 この通信は、制限してはならず、また、第七十一条に定める割当数の一部を構成するものと認めてはならない。
 移動される捕虜代表に対しては、その事務を後任者に引き継ぐための充分な時間を与えなければならない。
 捕虜代表が解任された場合には、その理由は、利益保護国に通知しなければならない。

第三章 刑罰及び懲戒罰

Ⅰ 総則

第八十二条〔適用法令〕

 捕虜は、抑留国の軍隊に適用される法律、規則及び命令に服さなければならない。抑留国は、その法律、規則及び命令に対する捕虜の違反行為について司法上又は懲戒上の措置を執ることができる。但し、その手続又は処罰は、本章の規定に反するものであってはならない。

 抑留国の法律は、規則又は命令が、捕虜が行った一定の行為について処罰すベきものと定めている場合において、抑留国の軍隊の構成員が行った同一の行為については処罰すべきものでないときは、その行為については、懲戒罰のみを科することができる。

第八十三条〔懲戒、司法手続〕

 抑留国は、捕虜が行ったと認められる違反行為に対する処罰が司法上又は懲戒上の手続のいずれによるべきかを決定するに当っては、権限のある当局が最大の寛容を示し、且つ、できる限り司法七の措置よりも懲戒上の措置を執ることを確保しなければならない。

第八十四条〔裁判所〕

 捕虜は、軍事裁判のみが裁判することができる。但し、非軍事裁判所が、捕虜が犯したと主張されている当該違反行為と同一の行為に関して抑留国の軍隊の構成員を裁判することが抑留国の現行の法令によって明白に認められている場合は、この限りでない。

 捕虜は、いかなる場合にも、裁判所のいかんを問わず、一般に認められた独立及び公平についての不可欠な保障を与えない裁判所、特に、その手続が第百五条に定める防ぎょの権利及び手段を被告人に与えない裁判所では、裁判してはならない。

第八十五条〔捕虜となる前の違反行為〕

 捕虜とされる前に行った行為について抑留国の法令に従って訴追された捕虜は、この条約の利益を引き続き享有する。有罪の判決を受けても、同様である。

第八十六条〔一事不再理〕

 捕虜は、同一の行為又は同一の犯罪事実については、重ねて処罰することができない。

第八十七条〔刑罰〕

 抑留国の軍当局及び裁判所は、捕虜に対しては、同一の行為を行った抑留国の軍隊の構成員に関して規定された刑罰以外の刑罰を科してはならない。

 抑留国の裁判所又は当局、刑罰を決定するに当っては、被告人が抑留国の国民ではなくて同国に対し忠誠の義務を負わない事実及び被告人がその意思 に関係のない事情によって抑留国の権力内にある事実をできる限り考慮に入れなければならない。前記の裁判所又は当局は、捕虜が訴追された違反行為に関して 定める刑罰を自由に軽減することができるものとし、従って、このためには、所定の最も軽い刑罰にかかわりなく刑罰を科することができる。
 個人の行為に関して集団に科する刑罰、肉体に加える刑罰、日光が入らない場所における拘禁及び一般にあらゆる種類の拷問又は残虐行為は、禁止する。
 抑留国は、捕虜の階級を奪ってはならず、また、捕虜の階級章の着用を妨げてはならない。

第八十八条〔刑罰の執行〕

 懲戒罰又は刑罰に服する捕虜たる将校、下士官及び兵に対しては、同一の罰に関して抑留国の軍隊の同等の階級に属する構成員に適用される待遇よりもきびしい待遇を与えてはならない。

 女子の捕虜に対しては、抑留国の軍隊の構成員たる女子が同様の違反行為について受けるところよりも、きびしい罰を科してはならず、又はきびしい待遇を罰に服する間与えてはならない。
 女子の捕虜に対しては、いかなる場合にも、抑留国の軍隊の構成員たる男子が同様の違反行為について受けるところよりも、きびしい罰を科してはならず、又はきびしい待遇を罰に服する間与えてはならない。
 捕虜は、懲戒罰又は刑罰に服した後は、他の捕虜と差別して待遇してはならない。

Ⅱ 懲戒罰

第八十九条〔懲戒罰の形式〕

 捕虜に対して科することができる懲戒罰は、次のものとする。


(1)  三十日以内の期間について行う、第六十条及び第六十二条の規定に基いて捕虜が受領すべき前払の俸給及び労働賃金の百分の五十以下の減給

(2)  この条約で定める待遇以外に与えられている特権の停止

(3)  一日につき二時間以内の労役

(4)  拘置
 (3)に定める罰は、将校には科さないものとする。
 懲戒罰は、いかなる場合にも、非人道的なもの、残虐なもの又は捕虜の健康を害するものであってはならない。

第九十条〔懲戒罰の期間〕

 一の懲戒罰の期間は、いかなる場合にも、三十日をこえてはならない。紀律に対する違反行為に関する審問又は懲戒の決定があるまでの間における拘禁の期間は、捕虜に言い渡す本罰に通算しなければならない。

 捕虜が懲戒の決定を受ける場合において、同時に二以上の行為について責任を問われているときでも、それらの行為の間に関連があるかどうかを問わず、前記の三十日の最大限度は、こえてはならない。
 懲戒の言渡と執行との間の期間は、一箇月をこえてはならない。
 捕虜について重ねて懲戒の決定があった場合において、いずれかの懲戒罰の期間が十日以上であるときは、いずれの二の懲戒についても、その執行の間には、少くとも三日の期間を置かなければならない。

第九十一条〔成功した逃走〕

 捕虜の逃走は、次の場合には、成功したものと認める。


(1)  捕虜がその属する国又はその同盟国の軍隊に帰着した場合

(2)  捕虜が抑留国又はその同盟国の支配下にある地域を去った場合

(3)  捕虜がその属する国又はその同盟国の国旗を掲げる船舶で抑留国の領水内にあるものに帰着した場合。但し、その船舶が抑留国の支配下にある場合を除く。
 本条の意味における逃走に成功した後に再び捕虜とされた者に対しては、以前の逃走について罰を科してはならない。

第九十二条〔不成功の逃走〕

 逃走を企てた捕虜で第九十一条の意味における逃走に成功する前に再び捕虜とされたものに対しては、その行為が重ねて行われたものであるとないとを問わず、その行為については懲戒罰のみを科することができる。

 再び捕虜とされた者は、権限のある軍当局に遅滞なく引き渡さなければならない。
 第八十八条第四項の規定にかかわらず、成功しなかった逃走の結果として処罰された捕虜は、特別の監視の下に置くことができる。その監視は、捕虜 の健康状態を害するものであってはならず、捕虜収容所内で行われるものでなければならず、また、この条約によって捕虜に与えられる保護のいずれをも排除す るものであってはならない。

第九十三条〔関連の違反行為〕

 逃走又は逃走の企図は、その行為が重ねて行われたものであるとないとを問わず、捕虜が逃走中又は逃走の企図中に行った犯罪行為について司法手続による裁判に付されたときに刑を加重する情状と認めてはならない。

 捕虜が逃走を容易にする意思のみをもって行った違反行為で生命及び身体に対する暴行を伴わないもの、たとえば、公の財産に対して行った違反行 為、利得の意思を伴わない盗取、偽造文書の作成又は行使、軍服以外の被服の着用等については、第八十三条に掲げる原則に従って懲戒罰のみを科することがで きる。
 逃走又は逃走の企図をほう助し、又はそそのかした捕虜に対しては、その行為について懲戒罰のみを科することができる。

第九十四条〔再び捕虜とした旨の通知〕

 逃走した捕虜が再び捕虜とされた場合にはその事実については、第百二十二条に定めるところにより、捕虜が属する国に通告しなければならない。但し、その逃走が既に通告されているときに限る。

第九十五条〔懲戒決定までの拘禁〕

 紀律に対する違反行為について責任を問われた捕虜は、抑留国の軍隊の構成員が同様の違反行為について責任を問われたとき同様に拘禁される場合又は収容所の秩序及び紀律の維持のために必要とされる場合を除く外、懲戒の決定があるまでの間、拘禁してはならない。

 紀律に対する違反行為についての処分があるまでの間における捕虜の拘禁の期間は、最少限度としなければならず、また、十四日をこえてはならない。
 本章第九十七条及び第九十八条の規定は、紀律に対する違反行為についての処分があるまでの間に拘禁されている捕虜に適用する。

第九十六条〔権限ある当局〕

 紀律に対する違反行為を構成する行為は、直ちに調査しなければならない。

 懲戒罰は、収容所長の資格で懲戒権を有する将校又はその代理をし、若しくはその懲戒権を委任される責任のある将校のみが、言い渡すことができる。但し、裁判所及び上級の軍当局の権限を害するものではない。
 懲戒権は、いかなる場合にも、捕虜に委任され、又は捕虜により行使されてはならない。
 違反行為の責任を問われた捕虜に対しては、懲戒の決定の言渡の前に、責任を問われた違反行為に関する正確な情報を告げ、且つ、当該捕虜が自己の 行為を弁明し、及び自己を防ぎょする機会を与えなければならない。その捕虜に対しては、特に、証人の喚問を求めること及び必要があるときは資格のある通訳 人に通訳させることを許さなければならない。決定は、当該捕虜及び捕虜代表に対して告知しなければならない。
 懲戒の記録は、収容所長が保存し、且つ、利益保護国の代表者の閲覧に供しなければならない。

第九十七条〔懲戒罰の執行場所〕

 捕虜は、いかなる場合にも、懲治施設(監獄、懲治所、徒刑場等)に移動して懲戒罰に服させてはならない。

 捕虜を懲戒罰に服させるすべての場所は、第二十五条に掲げる衛生上の要件を満たすものでなければならない。懲戒罰に服する捕虜については、第二十九条の規定に従って、清潔な状態を保つことができるようにしなければならない。
 将校及びこれに相当する者は、下士官又は兵と同一の場所に拘禁してはならない。
 懲戒罰に服する女子の捕虜は、男子の捕虜と分離した場所に拘禁し、且つ、女子の直接の監視の下に置かなければならない。

第九十八条〔重要な保障〕

 懲戒罰として拘禁される捕虜は、拘禁された事実だけでこの条約の規定の適用が必然的に不可能となった場合を除く外、引き続きこの条約の規定の利益を享有する。第七十八条及び第百二十六条の規定の利益は、いかなる場合にも、その捕虜から奪ってはならない。

 懲戒罰に服する捕虜からは、その階級に伴う特権を奪ってはならない。
 懲戒罰に服する捕虜に対しては、一日に少くとも二時間、運動し、及び戸外にあることを許さなければならない。
 それらの捕虜に対して、その請求があったときは、日日の検診を受けることを許さなければならない。それらの捕虜は、その健康状態により必要とされる治療を受けるものとし、また、必要がある場合には、収容所の病室又は病院に移されるものとする。
 それらの捕虜に対しては、読むこと、書くこと及び信書を発受することを許さなければならない。但し、送付を受けた小包及び金銭は、処置が終了す るまでの間、留置することができる。その間は、送付を受けた小包及び金銭は、捕虜代表に委託しなければならず、捕虜代表は、その荷物の中にある変敗しやす い物を病室に引き渡さなければならない。

Ⅲ 司法手続

第九十九条〔一般原則〕

 捕虜は、実行の時に効力があった抑留国の法令又は国際法によって禁止されていなかった行為については、これを裁判に付し、又はこれに刑罰を科してはならない。

 捕虜に対しては、責任を問われた行為について有罪であると認めさせるために精神的又は肉体的強制を加えてはならない。
 捕虜は、防ぎょ方法を提出する機会を与えられ、且つ、資格のある弁護人の援助を受けた後でなければ、これに対して有罪の判決をしてはならない。

第百条〔死刑〕

 捕虜及び利益保護国に対しては、抑留国の法令に基いて死刑を科することができる犯罪行為について、できる限りすみやかに通知しなければならない。

 その他の犯罪行為は、その後は、捕虜が属する国の同意を得ないでは、死刑を科することができる犯罪行為としてはならない。
 死刑の判決は、第八十七条第二項に従って、被告人が抑留国の国民ではなくて同国に対し忠誠の義務を負わない事実及び被告人がその意思に関係のない事情によって抑留国の権力内にある事実を裁判所が特に留意した後でなければ、捕虜に言い渡してはならない。

第百一条〔死刑執行までの期間〕

 捕虜に対して死刑の判決の言渡があった場合には、その判決は、利益保護国が第百七条に定める詳細な通告を指定のあて先で受領した日から少くとも六箇月の期間が経過する前に執行してはならない。

第百二条〔判決の有効条件〕

 捕虜に対して言い渡された判決は、抑留国の軍隊の構成員の場合と同一の裁判所により同一の手続に従って行われ、且つ、本章の規定が遵守された場合でなければ、効力を有しない。

第百三条〔裁判までの勾留〕

 捕虜に関する司法上の取調は、事情が許す限りすみやかに、且つ、裁判ができる限りすみやかに開始されるように、行わなければならない。捕虜は、抑 留国の軍隊の構成員が同様の犯罪行為について責任を問われれば勾留される場合又は国の安全上その勾留を必要とする場合を除く外、裁判があるまでの間、勾留 してはならない。いかなる場合にも、この勾留の期間は、三箇月をこえてはならない。

 裁判があるまでの間に捕虜が勾留された期間は、当該捕虜に科する拘禁の本刑に通算しなければならず、また、刑の決定に当って考慮に入れなければならない。
 本章第九十七条及び第九十八条の規定は、裁判があるまでの間において勾留される捕虜に適用する。

第百四条〔手続の通知〕

 抑留国は、捕虜について司法手続を開始することに決定した場合には、利益保護国に対し、できる限りすみやかに、且つ、少くとも裁判の開始の三週間 前に、その旨を通知しなければならない。この三週間の期間は、その通知が、利益保護国があらかじめ抑留国に対して指定したあて先において利益保護国に到達 した日から起算する。

 前記の通知書には、次の事項を掲げなければならない。

(1)  捕虜の氏名、階級、軍の番号、連隊の番号、個人番号又は登録番号、生年月日及び職業

(2)  抑留又は勾留の場所

(3)  捕虜に関する公訴事実の細目及び適用される法令の規定

(4)  事件を裁判する裁判所並びに裁判の開始の期日及び場所
 抑留国は、捕虜代表に対しても同一の通知をしなければならない。
 利益保護国、当該捕虜及び関係のある捕虜代表が裁判の開始の少くとも三週間前に前記の通知を受領した旨の証拠が裁判の開始に当って提出されなかった場合には、裁判は、開始してはならず、延期しなければならない。

第百五条〔防御の権利〕

 捕虜は、同僚の捕虜の一人に補佐を受け、防ぎょのため資格のある弁護人を選任し、証人の喚問を求め、及び必要と認めるときは有能な通訳人に通訳をさせる権利を有する。抑留国は、捕虜に対し、裁判の開始前の適当な時期に、これらの権利を有する旨を告げなければならない。

 利益保護国は、捕虜が弁護人を選任しなかった場合には、捕虜に弁護人を附さなければならない。このため、利益保護国には、少くとも一週間の猶予 期間を与えなければならない。抑留国は、利益保護国の請求があったときは、これに弁護人たる資格のある者の名簿を交付しなければならない。抑留国は、捕虜 及び利益保護国が弁護人を選任しなかった場合には、防ぎょに当らせるため、資格のある弁護人を指名しなければならない。
 捕虜の防ぎょに当る弁護人に対しては、被告人の防ぎょの準備をさせるため、裁判の開始前に少くとも二週間の猶予期間を与え、及び必要な便益を与 えなければならない。この弁護人は、特に、自由に被告人を訪問し、且つ、立会人なしで被告人と接見することができる。この弁護人は、また防ぎょのために証 人(捕虜を含む。)と協議することができる。この弁護人は、不服申立又は請願の期間が満了するまでの間、前記の便益を享有する。
 捕虜に関する起訴状及び抑留国の軍隊に適用される法令に従って通常被告人に送達される書類は、捕虜が理解する言語で記載して、裁判の開始前に充 分に早く被告人たる捕虜に送達しなければならない。捕虜の防ぎょに当る弁護人に対しても、同一の条件で同一の送達をしなければならない。
 利益保護国の代表者は、事件の裁判に立ち会う権利を有する。但し、例外的に国の安全のため裁判が非公開で行われる場合は、この限りでない。この場合には、抑留国は、利益保護国にその旨を通知しなければならない。

第百六条〔不服申立〕

 各捕虜は、自己について言い渡された判決に関しては、抑留国の軍隊の構成員と同様に、判決の破棄若しくは訂正又は再審を請求するため不服を申し立 て、又は請願をする権利を有する。その捕虜に対しては、不服申立又は請願の権利及びこれを行使することができる期間について完全に告げなければならない。

第百七条〔判決の通知〕

 捕虜について言い渡された判決は、その概要の通知書により、直ちに利益保護国に対して通知しなければならない。その通知書には、捕虜が判決の破棄 若しくは訂正又は再審を請求するため不服を申し立て、又は請願をする権利を有するかどうかをも記載しなければならない。その通知書は、関係のある捕虜代表 に対しても交付しなければならない。その通知書は、捕虜が出頭しないで判決が言い渡されたときは、被告人たる捕虜に対しても、当該捕虜が理解する言語で記 載して交付しなければならない。抑留国は、また、利益保護国に対し、不服申立又は請願の権利を行使するかどうかについての捕虜の決定を直ちに通知しなけれ ばならない。

 更に、捕虜に対する有罪の判決が確定した場合及び捕虜に対し第一審判決で死刑の言渡があった場合には、抑留国は、利益保護国に対し、次の事項を記載する詳細な通知書をできる限りすみやかに送付しなければならない。

(1)  事実認定及び判決の正確な本文

(2)  予備的な取調及び裁判に関する概要の報告で特に訴追及び防ぎょの要点を明示するもの

(3)  必要がある場合には、刑を執行する営造物
 前各号に定める通知は、利益保護国があらかじめ抑留国に通知したあて名にあてて利益保護国に送付しなければならない。

第百八条〔刑の執行、執行規則〕

 適法に確定した有罪の判決により捕虜に対して言い渡した刑は、抑留国の軍隊の構成員の場合と同一の営造物において同一の条件で執行しなければならない。この条件は、いかなる場合にも、衛生上及び人道上の要件を満たすものでなければならない。

 前記の刑を言い渡された女子の捕虜は、分離した場所に拘禁し、且つ、女子の監視の下に置かなければならない。
 自由刑を言い渡された捕虜は、いかなる場合にも、この条約の第七十八条及び第百二十六条の規定による利益を引き続いて享有する。更に、それらの 捕虜は、通信を発受し、毎月少くとも一個の救済小包を受領し、規則的に戸外で運動し、並びにその健康状態により必要とされる医療及び希望する宗教上の援助 を受けることを許されるものとする。それらの捕虜に科せられる刑罰は、第八十七条第三項の規定に従うものでなければならない。

第四編 捕虜たる身分の終了

第一部 直接送還及び中立国における入院

第百九条〔一般的観察〕

 本条第三項の規定を留保して、紛争当事国は、重傷及び重病の捕虜を、その数及び階級のいかんを問わず、輸送に適する状態になるまで治療した後次条第一項に従って本国に送還しなければならない。

 紛争当事国は、敵対行為の期間を通じて、関係中立国の協力により、次条第二項に掲げる傷者又は病者たる捕虜の中立国における入院について措置を 執ることに努めなければならない。更に、紛争当事国は、長期間にわたり捕虜たる身分にあった健康な捕虜の直接送還又は中立国における抑留について協定を締 結することができる。
 本条第一項に基いて送還の対象となる傷者又は病者たる捕虜は、敵対行為の期間中は、その意思に反して送還してはならない。

第百十条〔送還及び入院〕

 次の者は、直接に送還しなければならない。


(1)  不治の傷者及び病者で、精神的又は肉体的機能が著しく減退したと認められるもの

(2)  一年以内に回復する見込がないと医学的に診断される傷者及び病者で、その状態が療養を必要としており、且つ、精神的又は肉体的機能が著しく減退したと認められるもの

(3)  回復した傷者及び病者で、精神的又は肉体的機能が著しく、且つ、永久的に減退したと認められるもの
 次の者は、中立国において入院させることができる。

(1)  負傷又は発病の日から一年以内に回復すると予想される傷者又は病者で、中立国で療養すれば一層確実且つ迅速に回復すると認められるもの

(2)  引き続き捕虜たる身分にあれば精神又は肉体の健康に著しく危険があると医学的に診断される捕虜で、中立国で入院すればこの危険が除かれると認められるもの
 中立国で入院した捕虜が送還されるために満たすべき条件及びそれらの捕虜の地位は、関係国間の協定で定めなければならない。一般に中立国で入院した捕虜で次の部類に属するものは、送還しなければならない。

(1)  健康状態が直接送還について定めた条件を満たす程度に悪化した者

(2)  精神的又は肉体的機能が療養後も著しく害されている者
 直接送還又は中立国における入院の理由となる障害又は疾病の種類を決定するための特別協定が関係紛争当事国間に締結さ れていない場合には、それらの種類は、この条約に附属する傷者及び病者たる捕虜の直接送還及び中立国における入院に関するひな型協定並びに混成医療委員会 に関する規則に定める原則に従って定めなければならない。

第百十一条〔中立国における抑留〕

 抑留国及び捕虜が属する国並びにその二国が合意した中立国は、敵対行為が終了するまでの間その中立国の領域内に捕虜を抑留することができるようにする協定の締結に努めなければならない。

第百十二条〔混成医療委員会〕

 敵対行為が生じたときは、傷者及び病者たる捕虜を診察し、並びにその捕虜に関して適当なすべての決定をさせるため、混成医療委員会を任命しなければならない。混成医療委員会の任命、任務及び活動については、この条約に附属する規則で定めるところによる。

 もっとも、抑留国の医療当局が明白に重傷又は重病であると認めた捕虜は、混成医療委員会の診察を要しないで送還することができる。

第百十三条〔診療を受ける権利〕

 抑留国の医療当局が指定した捕虜の外、次の部類に属する傷者又は病者たる捕虜は、前条に定める混成医療委員会の診察を受ける権利を有する。


(1)  同一の国籍を有する医師又は当該捕虜が属する国の同盟国たる紛争当事国の国民である医師で収容所内でその任務を行うものが指定した傷者及び病者

(2)  捕虜代表が指定した傷者及び病者

(3)  その属する国又は捕虜に援助を与える団体でその国が正当に承認したものにより指定された傷者及び病者
 もっとも、前記の三部類の一に属しない捕虜も、それらの部類に属する者の診察後は、混成医療委員会の診察を受けることができる。
 混成医療委員会の診察を受ける捕虜と同一の国籍を有する医師及び捕虜代表に対しては、その診察に立ち会うことを許さなければならない。

第百十四条〔災害を受けた捕虜〕

 災害を被った捕虜は、故意に傷害を受けた場合を除く外、送還又は中立国における入院に関してこの条約の規定の利益を享有する。

第百十五条〔判決に服している捕虜〕

 懲戒罰を科せられている捕虜で送還又は中立国における入院の条件に適合するものは、その捕虜がその罰を受け終っていないことを理由として抑留して置いてはならない。

 訴追され、又は有罪の判決を言い渡された捕虜で送還又は中立国における入院を指定されたものは、抑留国が同意したときは、司法手続又は刑の執行を終る前の送還又は中立国における入院の利益を享有する。
 紛争当事国は、司法手続又は刑の執行を終るまでの間抑留される捕虜の氏名を相互に通知しなければならない。

第百十六条〔送還の費用〕

 捕虜の送還又は中立国への移送の費用は、抑留国の国境からは、捕虜が属する国が負担しなければならない。

第百十七条〔送還後の活動〕

 送還された者は、現役の軍務に服させてはならない。

第二部 敵対行為の終了の際における捕虜の解放及び送還

第百十八条〔解放及び送還〕

 捕虜は、実際の敵対行為が終了した後遅滞なく解放し、且つ、送還しなければならない。

 このための規定が敵対行為を終了するために紛争当事国間で締結した協定中にない場合又はそのような協定がない場合には、各抑留国は、前項に定める原則に従って、遅滞なく送還の計画を自ら作成し、且つ、実施しなければならない。
 前記のいずれの場合にも、採択した措置は、捕虜に知らせなければならない。
 捕虜の送還の費用は、いかなる場合にも、抑留国及び捕虜が属する国に公平に割り当てなければならない。この割当は、次の基礎に基いて行うものとする。

(a)  両国が隣接国であるときは、捕虜が属する国は、抑留国の国境からの送還の費用を負担しなければならない。

(b)  両国が隣接国でないときは、抑留国は、自国の国境に至るまで又は捕虜が属する国の領域に最も近い自国の乗船港に至るまでの自国の領域内における 捕虜の輸送の費用を負担しなければならない。関係国は、その他の送還の費用を公平に割り当てるために相互に協定しなければならない。この協定の締結は、い かなる場合にも、捕虜の送還を遅延させる理由としてはならない。

第百十九条〔手続の細部〕

 送還は、第百十八条及び次項以下の規定を考慮して、捕虜の移動についてこの条約の第四十六条から第四十八条までに定める条件と同様の条件で、実施しなければならない。

 送還に当っては、第十八条の規定に基いて捕虜から取り上げた有価物及び抑留国の通貨に両替されなかった外国通貨は、捕虜に返還しなければならな い。理由のいかんを問わず送還に当って捕虜に返還されなかった有価物及び外国通貨は、第百二十二条に基いて設置される捕虜情報局に引き渡さなければならな い。
 捕虜は、その個人用品並びに受領した通信及び小包を携帯することを許される。それらの物品の重量は、送還の条件により必要とされるときは、各捕 虜が携帯することができる適当な重量に制限することができる。各捕虜は、いかなる場合にも、少くとも二十五キログラムの物品を携帯することを許される。
 送還された捕虜のその他の個人用品は、抑留国が保管しなければならない。それらの個人用品は、抑留国が、捕虜が属する国との間で輸送条件及び輸送費用の支払を定める協定を締結した場合には、直ちに捕虜に送付しなければならない。
 訴追することができる違反行為についての刑事訴訟手続がその者について進行中の捕虜は、司法手続及び必要があるときは刑の執行を終るまでの間、抑留して置くことができる。訴追することができる違反行為について既に有罪の判決を受けた捕虜についても、同様とする。
 紛争当事国は、司法手続又は刑の執行を終るまでの間抑留して置く捕虜の氏名を相互に通知しなければならない。
 紛争当事国は、離散した捕虜を捜索し、且つ、できる限り短期間内に送還することを確保するため、協定で委員会を設置しなければならない。

第三部 捕虜の死亡

第百二十条〔遺言書、死亡証明書〕

 捕虜の遺言書は、その本国法で必要とされる要件を満たすように作成しなければならない。本国は、この点に関する要件を抑留国に通知するために必要 な措置を執るものとする。遺言書は、捕虜の要請があった場合及び捕虜の死亡後はあらゆる場合に、利益保護国に遅滞なく送付し、その認証謄本は、中央捕虜情 報局に送付しなければならない。

 捕虜として死亡したすべての者については、第百二十二条に従って設置される捕虜情報局に対し、できる限りすみやかに、この条約に附属するひな型 に合致する死亡証明書又は責任のある将校が認証した表を送付しなければならない。その証明書又は認証した表には、第十七条第三項に掲げる身分証明書の細 目、死亡の・年月日及び場所、死因、埋葬の年月日及び場所並びに墓を識別するために必要なすべての明細を記載しなければならない。
 捕虜の土葬又は火葬は、死亡を確認すること、報告書の作成を可能にすること及び必要があるときは死者を識別することを目的とする死体の医学的検査の後に行わなければならない。
 抑留当局は、捕虜たる身分にある間に死亡した捕虜ができる限りその属する宗教の儀式に従って丁重に埋葬されること並びにその墓が尊重され、適当 に維持され、及びいつでも見出されるように標示されることを確保しなければならない。死亡した捕虜で同一の国に属したものは、できる限り同じ場所に埋葬し なければならない。
 死亡した捕虜は、避けがたい事情によって共同の墓を使用する必要がある場合を除く外、各別の墓に埋葬しなければならない。その死体は、衛生上絶 対に必要とされる場合、死者の宗教に基く場合又は本人の明示的な希望による場合に限り、火葬に付することができる。火葬に付した場合には、捕虜の死亡証明 書に火葬の事実及び理由を記載しなければならない。
 埋葬及び墓に関するすべての明細は、墓をいつでも見出すことができるように、抑留国が設置する墳墓登録機関に記録しなければならない。墓の表及 び墓地その他の場所に埋葬された捕虜に関する明細書は、その捕虜が属した国に送付しなければならない。それらの墓を管理し、及び死体のその後の移動を記録 する責任は、その地域を支配する国がこの条約の締約国である場合には、その国が負う。本項の規定は、本国の希望に従ってその遺骨が適当に処分されるまでの 間、墳墓登録機関が保管する遺骨についても、適用する。

第百二十一条〔特別の場合の死亡〕

 捕虜の死亡又は重大な傷害で衛兵、他の捕虜その他の者に起因し、又は起因した疑があるもの及び捕虜の原因不明の死亡については、抑留国は、直ちに公の調査を行わなければならない。

 前記の事項に関する通知は、直ちに利益保護国に与えなければならない。証人、特に、捕虜たる証人からは、供述を求め、それからの供述を含む報告書を利益保護国に送付しなければならない。
 調査によって一人又は二人以上の者が罪を犯したと認められるときは、抑留国は、責任を負うべき者を訴追するためにすべての措置を執らなければならない。

第五編 捕虜に関する情報局及び救済団体

第百二十二条〔情報局〕

 各紛争当事国は、紛争の開始の際及び占領のあらゆる場合に、その権力内にある捕虜に関する公の情報局を設置しなければならない。第四条に掲げる部 類の一に属する者を領域内に収容した中立国又は非交戦国は、それらの者に関して同一の措置を執らなければならない。それらの国は、捕虜情報局に対してその 能率的な運営のため必要な建物、設備及び職員を提供することを確保しなければならない。それらの国は、この条約中の捕虜の労働に関する部に定める条件に基 いて、捕虜情報局で捕虜を使用することができる。

 各紛争当事国は、その権力内に陥った第四条に掲げる部類の一に属する敵人に関し、本条第四項、第五項及び第六項に掲げる情報をできる限りすみや かに自国の捕虜情報局に提供しなければならない。中立国又は非交戦国は、その領域内に収容した前記の部類に属する者に関し、同様の措置を執らなければなら ない。
 捕虜情報局は、利益保護国及び第百二十三条に定める中央捕虜情報局の仲介により、関係国に対してその情報を最もすみやかな方法で直ちに通知しなければならない。
 その情報は、関係のある近親者にすみやかに了知させることを可能にするものでなければならない。第十七条の規定を留保して、その情報は、捕虜情 報局にとって入手可能である限り、各捕虜について、氏名、階級、軍の番号、連隊の番号、個人番号又は登録番号、出生地及び生年月日、その属する国、父の名 及び母の旧姓、通知を受ける者の氏名及び住所並びに捕虜に対する通信を送付すべきあて名を含むものでなければならない。
 捕虜情報局は、捕虜の移動、解放、送還、逃走、入院及び死亡に関する情報を各種の機関から得て、その情報を前記の第三項に定める方法で通知しなければならない。
 同様に、重病又は重傷の捕虜の健康状態に関する情報も、定期的に、可能なときは、毎週、提供しなければならない。
 捕虜情報局は、また、捕虜(捕虜たる身分にある間に死亡した者を含む。)に関するすべての問合せに答える責任を負う。捕虜情報局は、情報を求められた場合において、その情報を有しないときは、それを入手するために必要な調査を行うものとする。
 捕虜情報局のすべての通知書は、署名又は押印によって認証しなければならない。
 捕虜情報局は、更に、送還され、若しくは解放された捕虜又は逃走し、若しくは死亡した捕虜が残したすべての個人的な有価物(抑留国の通貨以外の 通貨及び近親者にとって重要な書類を含む。)を取り集めて関係国に送付しなければならない。捕虜情報局は、それらの有価物を封印袋で送付しなければならな い。その封印袋には、それらの有価物を所持していた者を識別するための明確且つ完全な明細書及び内容の完全な目録を附さなければならない。前記の捕虜のそ の他の個人用品は、関係紛争当事国間に締結される取極に従って送付しなければならない。

第百二十三条〔中央捕虜情報局〕

 中央捕虜情報局は、中立国に設置する。赤十字国際委員会は、必要と認める場合には、関係国に対し、中央捕虜情報局を組織することを提案しなければならない。

 中央捕虜情報局の任務は、公的又は私的径路で入手することができる捕虜に関するすべての情報を収集し、及び捕虜の本国又は捕虜が属する国にその 情報をできる限りすみやかに伝達することとする。中央捕虜情報局は、この伝達については、紛争当事国からすべての便益を与えられるものとする。
 締約国、特に、その国民が中央捕虜情報局の役務の利益を享有する国は、中央捕虜情報局に対し、その必要とする財政的援助を提供するように要請されるものとする。
 前記の規定は、赤十字国際委員会又は第百二十五条に定める救済団体の人道的活動を制限するものと解してはならない。

第百二十四条〔料金の減免〕

 各国の捕虜情報局及び中央捕虜情報局は、郵便料金の免除及び第七十四条に定めるすべての免除を受けるものとし、更に、できる限り電報料金の免除又は少くともその著しい減額を受けるものとする。

第百二十五条〔救済団体〕

 抑留国は、その安全を保障し、又はその他合理的な必要を満たすために肝要であると認める措置を留保して、宗教団体、救済団体その他捕虜に援助を与 える団体の代表者及びその正当な委任を受けた代理人に対し、捕虜の訪問、出所いかんを問わず宗教的、教育的又は娯楽的目的に充てられる救済用の需品及び物 資の捕虜に対する分配並びに収容所内における捕虜の余暇の利用の援助に関してすべての必要な便益を与えなければならない。前記の団体は、抑留国の領域内に も、また、その他の国にも設立することができる。また、前記の団体には、国際的性質をもたせることができる。

 抑留国は、代表が抑留国の領域内で抑留国の監督の下に任務を行うことを許される団体の数を制限することができる。但し、その制限は、すべての捕虜に対する充分な救済の効果的な実施を妨げないものでなければならない。
 この分野における赤十字国際委員会の特別の地位は、常に、認め、且つ、尊重しなければならない。
 前記の目的に充てられる需品又は物資が捕虜に交付されたときは、直ちに又は交付の後短期間内に、捕虜代表が署名した各送付品の受領証を、その送 付品を発送した救済団体その他の団体に送付しなければならない。同時に、捕虜の保護について責任を負う当局は、その送付品の受領証を送付しなければならな い。

第六編 条約の実施

第一部 総則

第百二十六条〔監視〕

 利益保護国の代表者又は代表は、捕虜がいるすべての場所、特に、収容、拘禁及び労働の場所に行くことを許されるものとし、且つ、捕虜が使用するす べての施設に出入することができるものとする。それらの者は、また、移動中の捕虜の出発、通過又は到着の場所に行くことを許される。それらの者は、立会人 なしで、直接に又は通訳人を通じて、捕虜に、特に、捕虜代表と会見することができる。

 利益保護国の代表者及び代表は、訪問する場所を自由に選定することができる。その訪問の期間及び回数は、制限してはならない。訪問は、絶対的な軍事上の必要を理由とする例外的且つ一時的な措置として行われる場合を除く外、禁止されないものとする。
 抑留国及び前記の訪問を受ける捕虜が属する国は、必要がある場合には、それらの捕虜の同国人が訪問に参加することに合意することができる。
 赤十字国際委員会の代表も、同一の特権を享有する。その代表の任命は、訪問を受ける捕虜を抑留している国の承認を必要とする。

第百二十七条〔条約の普及〕

 締約国は、この条約の原則を自国のすべての軍隊及び住民に知らせるため、平時であると戦時であるとを問わず、自国においてこの条約の本文をできる限り普及させること、特に、軍事教育及びできれば非軍事教育の課目中にこの条約の研究を含ませることを約束する。

 戦時において捕虜について責任を負う軍当局その他の当局は、この条約の本文を所持し、及び同条約の規定について特別の教育を受けなければならない。

第百二十八条〔訳文、適用法令〕

 (第一条約の第四十八条と同じ。)

第百二十九条〔罰則〕

 (第一条約の第四十九条と同じ。)

第百三十条〔重大な違反行為〕

 前条にいう重大な違反行為とは、この条約が保護する人又は物に対して行われる次の行為、すなわち、殺人、拷問若しくは非人道的待遇(生物学的実験 を含む。}、身体若しくは健康に対して故意に重い苦痛を与え、若しくは重大な傷害を加えること、捕虜を強制して敵国の軍隊で服務させること又はこの条約に 定める公正な正式の裁判を受ける権利を奪うことをいう。

第百三十一条〔締約国の責任〕

 (第一条約の第五十一条と同じ。)

第百三十二条〔調査手続〕

 (第一条約の第五十二条と同じ。)

第百三十三条〔用語〕

 (第一条約の第五十五条と同じ。)

第百三十四条〔旧条約との関係〕

 この条約は、締約国間の関係においては、千九百二十九年七月二十七日の条約に代るものとする。

第百三十五条〔ヘーグ条約との関係〕

 千八百九十九年七月二十九日又は千九百七年十月十八日の陸戦の法規及び慣例に関するヘーグ条約によって拘束されている国でこの条約の締約国であるものの間の関係においては、この条約は、それらのヘーグ条約に附属する規則の第二章を補完するものとする。

第百三十六条〔署名〕

 本日の日付を有するこの条約は、千九百四十九年四月二十一日にジュネーヴで開かれた会議に代表者を出した国及び同会議に代表者を出さなかった千九百二十九年七月二十七日の条約の締約国に対し、千九百五十年二月十二日までその署名のため開放される。

第百三十七条〔批准〕

 (第一条約の第五十七条と同じ。)

第百三十八条〔効力の発生〕

 (第一条約の第五十八条と同じ。)

第百三十九条〔加入〕

 (第一条約の第五十九条と同じ。)

第百四十条〔加入の通告〕

 (第一条約の第六十条と同じ。)

第百四十一条〔直接の効果〕

 (第一条約の第六十一条と同じ。)

第百四十二条〔廃棄〕

 (第一条約の第六十三条と同じ。)

第百四十三条〔国際連合への登録〕

 (第一条約の第六十四条と同じ。)


ブログの容量の関係から続きは後程失礼します